2022年6月公開の映画「メタモルフォーゼの縁側」を見る。原作は鶴谷香央理によるウェブ配信コミック。監督は狩山俊輔。脚本は岡田惠和。制作は日テレアックスオン。配給は日活。
主演は芦田愛菜と宮本信子。孫と祖母ほどに年の違うふたりを結び付けたものはBLマンガというヒューマンドラマ。時代ならではの攻めた企画。
亡き夫の三回忌から戻り、暑い暑いと書店に涼みに入った老婆宮本信子はいつも料理本コーナーに行くと、そこはマンガコーナーに変わっていた。
「あら、きれいな絵」ということで手に取ったマンガ。それはBLだった。レジ店員芦田愛菜は思わず「あっ」と声を上げてしまうw
さてと、寝る前に買ってきた漫画でも読もうか。だが、男子高校生同士でキスシーンが始まる。「あらららら…」
一方そのころ佐山うらら(芦田愛菜)は風呂上りに同じマンガを読んでいる。薄ら笑いを浮かべながらw
習字教室をしてる市野井雪(宮本信子)はマンガにドハマリして「待ちきれない!」というように2巻、3巻と買い求めていく。
うららはそこで初めて同じジャンルのマンガを愛読する趣味の合う友を見つける。
同じく、夫を亡くしてしょんぼりしてた老婦人も、この漫画を読む楽しみを見つけた。
だがこの老婆はまだ知らない。世間がBLをどう見てるのかを。
1年半に単行本が1冊というペースでは退屈な毎日を紛らわせることができない。ならば、同じ作家の違う作品を読みたい。うららにオススメを訊ねてくる。だが、他の作品は引くほどハード。進路を決めないといけない時期にいらんことで悩む。
うららにはいちおう幼なじみクラスメート高橋恭平(なにわ男子)がいる。(この男でBL妄想はしないのか?)
だがその横にはヒエラルキー上位の長身美女(汐谷友希)。
うららは老婆の家を訪問し思う存分好きなマンガについて語り合う。ユキさん(宮本信子)はBLには過激なものもあることに理解が早かった。
同じ趣味で語り合える相手をみつけたうららは日々が充実w
うららが普段読んでるBLマンガを、久し振りにうららの家(カギっ子母子家庭)に遊びにやってきた高橋恭平に発見されて読まれてるのを見て冷や汗。
この男経由でクラスの美人JKにもBLマンガが広まってることを知って、うらら不機嫌。レジで美人同級生がBL買いに来てもBLにまったく関心がないフリ。
さらに、ユキさんの娘生田智子も母がBLを読んでることを知ってしまう。
このふたりが愛読するBL漫画家コメダ優は古川琴音。この人は昨年末の「岸辺露伴」でストーカー押しかけファンだった人だ。
そのころうららはユキさんから「自分で描いてみようとは思わないの?」かと。
いやいやいや、読む専門だし、そんな才能ないし、マンガの書き方もわからない。でも、なんとなく書き始めてみる。
ふたりは同人誌販売会に一緒に行く約束。しかしユキさんは腰が痛い。コミケ会場は若者でもキツイという混雑と長蛇の列。うららは受験勉強を口実に約束を断る。しかし勉強に身は入らない。進路、どうしよう…。
ふたりで茶飲み話しるうちにうららはマンガを描いて販売会に参加する決意。
しかし、これを本にして人に売る?正気か?さらに悩む。
オフセット印刷所(光石研)も紹介される。ユキさんは自分で揚げたてんぷらをもっていく。贈り物にはお返しが必要になるという重みにうららはたじろぐ。この1分ほどのやりとりは深い重要なシーンだと感じた。
残された日はあとわずか。あまりに素人作風。見てる視聴者が不安になる。
うららは会場で自分の本を売ることにビビる。(このヒロインはずっと呆然とした顔をしてる)
ユキさんは腰をやってしまったのに光石の車で駆けつけるのだが途中で故障。
結局売れたのは2冊だけだったのだが、ちょっとした奇蹟が起こってることを視聴者は知る。(ここ、もっと劇的感動的な何かを予想してたのだがそうならなかった。そこもリアル。)
何かをやり遂げた若者は輝いてる。爽やかな余韻を残した。
これほど作品を愛してくれた読者ファンがいるって作者は幸せだ。ちょっと泣いた。
主題歌はうららと雪「これさえあれば」。芦田愛菜の歌声を聴いたの初めて。
この映画に第14回TAMA映画賞特別賞を与えたのは正しい。青春映画として、日本映画の良作。情熱を傾けられる趣味を見つける素晴らしさは年齢と無関係だという励ましとメッセージ。
あと、この映画は自分の知ってる北区の風景だらけ。ファーストカットの宮本信子が立っている駅の風景がJR王子駅だとすぐわかった。かつて自分は毎日のように見た同じ風景。芦田愛菜が立ってた歩道橋も王子駅。
やっと描き上げたマンガ原稿を入稿した後、歩きながら「楽しかった」とつぶやいた場所は、王子警察署から十条駐屯地へ登っていく455号と旧岩槻街道の交差点、北区立パノラマプール十条台のところだ!
あと、昔は池袋ジュンク堂に毎日行ってた時期があった。
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