2023年3月15日水曜日

小林泰三「アリス殺し」(2013)

小林泰三「アリス殺し」(2013)を創元クライム・クラブ版で読む。
小林泰三(1962-2020)この作者を初めて読む。驚いた。自分はずっと「こばやしたいぞう」だと思ってたのだが「こばやしやすみ」と読むんだそうだ。

「不思議の国のアリス」世界観の夢ばかり見るヒロイン栗栖川亜理は大学院生。たぶん理工系大学。同じ夢ばかり見るので夢日記をつけるようにした。夢の中でハンプティ・ダンプティ墜落死に遭遇。
論文を書くために実験をしないといけない。大学に行ってみると博士研究員が謎の墜落死。
これって、夢の世界と現実が連動リンクしてる?!
夢の中でグリフォンが生ガキを喉に詰まらせ死亡すると、現実世界でも教授が牡蠣を食べたことが原因で死亡?!

どうやら、現実世界の大学関係者や刑事たちも夢世界仮想現実空間でアバターとなって存在?
本格ミステリ小説ということで選んだのだが、まるで仮想現実SFラノベ。なんだこりゃ?頭の固い大人がこの本を手に取ってしまったら途中で投げ出すだろうと思った。
作中の登場人物たちが夢と現実を行き来するので、会話がまるで噛み合ってない。主人公以外ほぼ全員に常識と論理性がない。

しかも夢世界ではアリス(亜理)が容疑者にされていて、期限以内に真犯人を見つけ出さないと首を斬られる?!
さらに現実世界でヒロインの1年先輩が大学内で刺殺。これってミステリーとしてちゃんと着地点があるのか?読んでいて激しく不安になる。とにかくふわふわしてる。

だが終盤になると主要人物2人が相次いで殺される残酷なダークファンタジーホラー童話みたいな展開。グロ描写。ええぇぇ…。

そもそもミステリー小説の登場人物たちはみんな正体が定かでない。この異世界空間でアバターとして存在し、誰と誰が一対一で対応してるのかがわかっていないことはミステリー小説の文法。登場人物たちが経験則と推理から誰が誰か考えて行動してる。そこは本格要素。

ラノベのようでとてもついていけないとも途中で思った。けど、何か新しいジャンルの小説を読んでいる気はした。その真相に驚くことはできた。結果、読後に一定の満足感はあった。

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