これはなかなか読もうという気が起きなかったのだが、そろそろ読まないとと思って読む。掲載順に読んでいく。
盲人独笑(昭和15年)
江戸時代の葛原勾当なる盲人で琴の名人という人物の日記を、太宰が抽出しアレンジしたというていの短編。
清貧譚(昭和16年)
聊斎志異からとられた一篇。菊を育てることだけが趣味の独身で貧乏な男が、菊の苗を手に入れるために沼津に行った帰りに、菊を育てる名人の若者とその姉を向島の自宅に住まわせる話。
こだわり強くて気位の高い貧乏人がめんどくさい。そしてファンタジー。
新釈諸国噺
昭和19年1月より諸雑誌で発表された5編、そして書き足された7編で昭和20年1月に刊行。太宰の井原西鶴リスペクト。日本各地の実録昔ばなし。
やたら気位の高い貧乏人、武士の一分へこだわりすぎる哀しみ、大岡裁き、浅ましい犯罪、実話系週刊誌ネタのような顛末、落語のような噺。
などなど時代小説っぽい短編。それも太宰らしい独特のテンポとリズムを持った文体。
竹青(昭和20年)
聊斎志異ふうな話。郷試に落ちる青年。努力が報われず不幸せ。死のうと思ったら烏になって…という人生の悲哀。太宰が憧れてた芥川の杜子春のような話が書きたかったのか?
お伽草紙
終戦直後の昭和20年10月に筑摩書房より書き下ろしで刊行。防空壕で子どもに読み聞かせしてた昔話を太宰が自由に妄想。
- 「瘤取り」こぶとりじいさんってこんな話だったっけ?!という驚き。
- 「浦島さん」竜宮城から戻った太郎がお土産を開けたら三百歳のおじいさんになっていたのを不幸と考えるのはおかしくない?という太宰の問題定義。
- 「カチカチ山」子どもに読むにはあまりに陰惨な事件。そもそも狸って何も悪くなくない?って問題定義。処女の残忍性、中年男の悲哀。太宰の同情。
- 「舌切雀」この昔話がどんな話だったかまるで思い出せない。きっとこんな話じゃない。
お伽草紙は太宰作品の中でも人気作かもしれないが、どれを読んでも悲しさでため息が出る。生きるって辛いし孤独。
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