2023年3月1日水曜日

東野圭吾「学生街の殺人」(1987)

東野圭吾「学生街の殺人」(1987)を講談社文庫(2010年63刷!)で読む。初めて読む。初期東野圭吾をじゃんじゃん読む。
実は自分は「容疑者X」とか「新参者」とか「秘密」とか「白夜行」とか、国民的人気作家になって以降の東野圭吾作品をぜんぜん読んでないw 初期の才気走った本格ミステリー風を好む。

主人公津村光平は工学系大学を卒業後、就職せずに同じ大学街で喫茶店兼ビリヤード場でアルバイトして暮らしてるモラトリアム青年。両親には「大学院に行ってる」とか嘘をついている。それは切ない。

バイト仲間で5歳ほど年上の元精密機械系メーカー社員らしき松木さん(真面目だがわりと野心的)が数日出勤してこない。光平くんが自宅を見に行くと殺されているのを発見。直後に女から不審電話。

さらに同じ街の6階建てアパートのエレベーターで恋人広美も刺殺。これが状況から言って密室。
この30歳ぐらいの恋人との出会いが踏切。飛び込み自殺を間一髪救ったことが出会い。このヒロインは元ピアニストを目指していたこと以外過去がわからない。付き合い始めてすぐ子どもを堕胎したこと、光平に内緒で児童養護施設でボランティアをしてたこと、婚約者がいたこと、こっそり頻繁に墓参りをしてたこと。なにやら過去に大きな悲劇を負ったようだ…。

これはジャンル的に青春小説。なにせ475ページ。わりと長々と冗長にも感じた。
松木が殺されたのは産業スパイが理由?広美が殺されたのも秘密を知られたから?ふたりの間にサイエンス・ノンフィクション系雑誌?
主人公と目つきの鋭い刑事が個別に調査。だんだんと目に見えなかった街の人間関係が明らかになっていく。
そしてクリスマスの商店街。クリスマスツリーで児童養護施設園長の老人の死体。

中盤の後半に最初の2つの殺人の真相と新犯人が判明する。だがさらに背後の驚く真相も盛って来る。そんな二段重ね丼。

やっぱり23歳青年にしては思考が大人だし冷静でスカしてる。ハードボイルドかもしれない。職場のバイト仲間のミニスカ姉ちゃんとも寝てる。これが80年代の若者か。

乱歩賞受賞でデビューしサラリーマンからプロ作家になって次の傑作を狙ってた東野圭吾の焦りと苦心も感じられる大作で力作。この作家が好きな人は一度は読んでおくべき。
表紙装丁は変えた方がもっと売れるかもしれない。

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