2023年3月2日木曜日

東野圭吾「放課後」(1985)

東野圭吾「放課後」(1985)を講談社文庫(2009年70刷!)で読む。第31回乱歩賞を受賞した、後の国民的人気作家のデビュー作長編。

実は18歳の夏休み以来の再読。当時持っていたこれと同じ文庫本はとっくにどこかの時点で失われていた。今こうして同じものを手に入れて読んでいる。

当時の自分はまだ乱歩や横溝、クリスティやエラリーの有名作、あとは清張や赤川次郎ぐらいしかミステリー小説というものを知らなかった。
何気に手に取った「放課後」だったのだが、初めて読んだとき、その動機に「ぐげぇ?!」と声が出たw 衝撃だった。
(自分がこれまで読んだミステリーで「動機」に心底驚けた作品はエラリークイーン「Yの悲劇」「九尾の猫」「十日間の不思議」、クリスティ「鏡は横にひび割れて」ぐらい。)

地元の国立大工学部情報工学科を卒業後、家電メーカーに勤めていた主人公は東北工場に飛ばされそうになったの期に私立女子高の数学教師に転職してすでに5年。前の職場の事務員だった妻と結婚してる。
だが、9月の新学期になったら駅のホームで急行列車に推し飛ばされそうになったり、プールで電気コードで感電させられそうになったり、さらに窓から投げ捨てられた植木鉢が頭を直撃しそうになる。これは命を狙われてる。だが本人にはその心当たりがない。

春に女子生徒の高原さんから切符を渡され信州に行こうと言われる。高校教師が女子生徒とそんなことをするわけにはいかないと断る。「待っている」と言われても無視だし放置だし。この女子生徒がこの直後からバイクに乗り不良と遊ぶようになる問題児。

この主人公教師の性格がドライ。授業ぶりも「マシン」という異名。結婚後に妻が妊娠しても「今は経済的に無理!」と堕胎までさせている。これは冷血人間。
だが、意外にこの主人公はむしろ人間として優しいかも…と読者に思わせていく。

主人公と主要登場人物はアーチェリー部員。練習が終わって更衣室に戻ろうとしたら引き戸が内側から心張り棒をかましてあって開かない。無理矢理中に入ると数学教師が青酸カリで毒殺されている…。
以後、主人公教師が生徒たちとドライな関係を保ちつつ、噂話や刑事からの情報であれこれ推理。

すると体育祭の余興仮装行列でピエロに扮した体育教師も毒殺。だが、そのピエロの仮装は主人公がするはずだった。ということはやはり自分が狙われた!?

頭脳明晰剣道少女が更衣室密室のトリックを解いたりする。そうなるとアーチェリー部の面々はアリバイが成立するな。すると、危険な魅力のある女性教師が怪しく見えてくる。

色んな事があった末に、主人公は事件の真相に気づく。最後はアーチェリーの練習試合をしながら犯人と対決。その驚くべき殺害計画のトリックと動機とは?!

久し振りに読んで内容のほとんどは忘れたいたのだが、教師2人を殺害する女子高生ならではの動機に驚けた。やっぱりその言葉を聴いたとき「ぐげぇ!」ってなったw そして、あのラストも覚えていた。

1985年は昭和60年。阪神タイガースが21年ぶりリーグ優勝と初の日本一にフィーバーしていた時代。だがこの作品は今読んでもそれほど古さを感じない。(仮装行列で「集団乞食」を提案するとか今ならありえないが)
東野圭吾は中韓東南アジア各国でよく読まれているらしい。「放課後」もわりと人気作らしい。今も読むべき作品だと思う。オススメする。

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