パトリシア・ハイスミス「見知らぬ乗客」(1950)を昭和47年青田勝訳の角川文庫版(平成10年改版)で読む。
おそらく今作がハイスミスの処女長編で一番有名な作品。というのもヒッチコックによって映画化(1951)されたから。
交換殺人という、当時は新しかったジャンルのサスペンス。
もう日本ではあまりパトリシア・ハイスミス(1921-1995)を読んでる人を見かけない。邦訳で読めるものも多くない。だが、近年になって2作「キャロル」「水の墓碑銘」が映画化されている。たぶん知ってる人は知っている。
Strangers on a Train by Patricia Highsmith 1950
主人公の青年建築家ガイ・ダニエル・ヘインズは故郷のテキサス・メトカーフへ汽車で向かっている。列車の1等コンパートメントの中でチャールス・ブルーノーと名乗る青年と出会う。この男が馴れ馴れしく話をしてきて身の上話をしたり質問したりしてくる。ガイはちょっとウザいなと感じる。
ガイはつい妻ミリアムと離婚したいという話をしてしまう。妻は他の男の子を妊娠中なのに離婚に応じようとしない。
一方でブルーノ―は金持ちなのに自分に金をくれない父を偏執的に嫌悪している。
ブルーノ―は驚くべき交換殺人計画を持ち掛ける。
ここまではなんとなくヒッチコック映画のあらすじとか読んで知ってたイメージ通りだった。ハイスミスのいかにも英米文体がぜんぜん頭に入ってこなかったけど。
ハイスミスは推理小説やサスペンス小説を書いてるつもりでなかったらしい。極限状態に置かれた人間の心理と曲折を描いた文学作品を書いてるつもりらしい。
読んでていてぜんぜん面白い展開になってくれなくてイライラした。冗長すぎた。
ブルーノ―のミリアム殺害がまったく計画性がない。ほぼアル中サイコパス男の行動。完全犯罪を計画するような慎重さがない。ガサツ。
でもってガイにつきまとう。今度は父親のサム・ブルーノ―を殺害するようにガイに要求。要求通りにしないとばらす!あとは心理的に嫌なことが続く。
善良ないちアメリカ市民が列車でたまたま一緒になった男から一方的に好意を持たれ、「オマエの殺したいっていってた妻を殺してあげたわ」って言われる恐怖。主人公ガイには同情しかない。
正直、期待したほどおもしろくなかった。もう日本ではあまりハイスミスが読まれていないのもわかる気がした。自分はハイスミス2冊目だったのだが、しばらくハイスミスを読まなくていいかなと感じた。
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