2023年2月2日木曜日

エラリー・クイーン「犯罪カレンダー」7月~12月

引続きエラリー・クイーン「犯罪カレンダー CALENDAR OF CRIME 7月~12月」を宇野利泰訳2002年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。

おそらく1946年から1951年にかけて発表されたもの。単行本として出版が1952年。早川書房から邦訳が2冊分売で初出したのが1962年。
5年前の秋。2冊共にBOで108円ゲット。掲載順に読んでいく。

7月 墜落した天使 The Fallen Angel
クイーンズ地区の大寺院風建築のセンター邸の老主人と結婚したドロシーはニッキ―の旧友。エラリーとふたりで訪問すると主人マイルズの目と鼻の先に屋根に飾られた怪物の石像が落下。もし当主が死ぬとセンター製薬は屋上にスタジオを構えるバイロン的な弟デイヴィドのものになる。そしてドロシーは主人の弟デイヴィドを愛し始めている…。
そしてマイルズが頭部を狙撃され弟デイヴィドが行方不明。
これはとても古典的なお屋敷ミステリー。

8月 針の目 The Needle's Eye
北欧系のエリクソン家所有のカリブ海の小島でのキャプテン・キッドの財宝探し。娘のインガの夫とその父の素性が怪しい。悪党かもしれない。娘が殺されるかもしれない…というエリクソンさんからの依頼でエラリーとニッキ―は島に赴いて行動を監視しながら宝探し。
エラリーの慧眼で宝のありかがわかった!と思ったらエリクソン氏は殺害。そして意外な真相。

9月 3つのR The Three R's
ミズーリにあるちょっと変わったバーロウ大学からエラリーへ救いを求める手紙。ポー研究の教授が夏休み中にアーカンソーの山小屋に小説を書きに行ったまま戻らない。研究室の床には血痕。日付を偽装した絵はがきまで届く。これはもう殺されてるかもしれない…。
だが、超一流探偵エラリーは騙されない!これもまったく意外な顛末。

10月 殺された猫 The Dead Cat
エラリーのアパート付でニッキ―に届いた黒猫会秘密集会の招待。黒猫衣装に仮面で指定ホテルへ向かうことになるニッキ―とエラリー。招待したのはニッキ―の旧友アンだった。
スペードのエースを引いた人が殺人鬼になるパーティーゲーム。暗闇の後にアンの夫が喉を切られて死んでいる…。わりと本格なクローズド密室殺人。

11月 ものをいう壜 The Telltale Bottle
麻薬取引が行われているレストランで偶然に符丁が合ってしまいブツを渡されたエラリー、憐れなネイティブアメリカン老夫妻、タクシー運転手、ウェイターの死体。それぞれが絡み合う刑事ドラマ。

12月 クリスマスと人形 The Dauphin's Doll
人形コレクターの婦人が遺した人形は孤児たちの保育事業基金のために競売されるのだが、価値があるのは10万ドルのダイヤ王冠をかぶるフランス王太子(Dauphin)に贈られた人形のみ。こいつを銀行の地下金庫からクリスマスのデパートで展示しないといけないのだが、弁護士ボンドリング氏は気が気じゃない…という駆け込み依頼。

怪盗コーマスからの犯行予告。エラリー親子とヴェリー警部らによる厳戒警備が敷かれたのだが…。
びっくりした。まるで名探偵明智小五郎と怪人二十面相で見るやつ。

以上6本、上巻を入れると12本を読んだ。「エラリー・クイーンの冒険」「新冒険」と並ぶ傑作短編集だった。
どれももれなく開始数ページがまるで頭に入ってこないような、英文特有の分かりにくい、エラリー特有のペダンチックな書き出し。
どれもがアメリカ文化と歴史をまぶしたアメリカのホームズ譚とでもいうべき作品。

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