2023年2月3日金曜日

加藤小夏「二十四の瞳」(2022)

昨年8月にBSプレミアムで「二十四の瞳」が放送された。脚本演出は吉田康弘。制作はNHKエンタープライズと松竹。
本放送は見逃してしまったのだがお正月の再放送でカバー。録画して見た。加藤小夏が出てるから。

主人公大石先生を演じるのは土村芳。「ゆるキャン△」でぐでんぐでんに酔った先生を演じてた人だ。すごく顔が地味で老けてる。この役を演じることは大きなプレッシャーだったに違いない。
壺井栄の原作を監督・木下惠介が映画化した「二十四の瞳」(1954)は日本映画の有名作なのだが自分はまだ一度も見たことがなかった。原作もまだ読んでいない。

昭和3年4月の小豆島。島民のほとんどが着物姿という時代にハイカラな洋服姿の若くて元気で明るい女の先生が岬の分教場に赴任する。大石久子先生(土村芳)だ。4里の道のりを自転車に乗って通勤。道行く人は目を丸くする。

12人の新1年生を担任。出席を取るシーンからたっぷり時間を使ってる。やさしい先生に明るく元気な子どもたち。あまりに理想的。男児はみんなイガグリ頭。
ヒロイン先生の母親が麻生祐未さんなのだが、ああ、だいぶ年取ったなあ。

貧しかった日本。嵐で村の家が壊れて後かたづけというシーン。その状況で無事だった子どもたちと笑ってるだけで「何がおかしいん?」と嫌味言ってくるババアとかいる。田舎って嫌だね。
でも子どもたちはみんな悲しい先生を励ますような優しい子。

脚を怪我した久子をお見舞いに来た校長先生がすぱすぱタバコ吸ってるシーンがリアリズム。昔は何処へ行ってもタバコの煙。
子どもたちがみんな先生に会いたくて山道を歩いて来たというシーンは子どもたちの優しさに感動。でも大石先生は本校へ赴任と知らされみんな泣く。浜辺でみんなで記念写真。
そして5年後、先生は結婚。

子どもたちが背負う現実。まっちゃんの母が女の子を産んですぐ産後の肥立ちが悪くて急死。そして大阪に行かされる。あまりに急な暗転。
アカの疑いをかけられた先生のところに警察が来るとか昭和初期らしい出来事も。
修学旅行で金毘羅さんへ。大阪に行ったと聞かされてたまっちゃんが奉公先で働かされてた。あ、このシーンは木下版二十四の瞳で見たことある。義務教育はどうなってる?

住む家がなくなって将来の展望がない子が泣きだすとか、子どもを学校に行かせる余裕のない家庭とか、そんな話を子どもから聴かされる先生もつらい。
校長(國村隼)以下の男性教師たちがみんな男の子たちを軍国主義日本に兵隊として奉仕させることしか考えてない。こういう人たちが戦後もなんのお咎めもなく学校にいた。大人たちが狂ってた。
大石先生は「お国のために死ねなんて言えない」と教師を辞める覚悟。

奉公に行くお別れに来た子、一家で島を出た家庭、結核病みで死期を悟った子、そして戦争という地獄は田舎の島にも。子どもたちが成長するにつれて世の中がどんどん酷くなってる。そして夫にも召集令状。母が寝たきりの末に死。
そして夫の戦死の知らせ。日本の敗戦。末娘の急死。教え子たちの墓参り。なんだこの地獄人生。金八先生が甘ったるく見えるハードモード。

見ていて今の子はみんな演技が上手いなと感心した。

年老いた先生はふたたび分教場で教えることに。戦争を生き延びたかつての教え子たちから歓迎会。
ここでやっと成長したまっちゃん役で加藤小夏登場。ヘアメイクが戦争直後の感じをリアルに再現した感じ?これは都会的洗練と高貴な透明感の小夏さまにはあまり似合ってみえない。
1年生のとき浜辺で撮った写真をみんなで見ながらしみじみしてドラマは終わる。ああ、二十四の瞳ってこんな話だったのか。
でも、20年ぐらい経ったにしてもまだ40代のはずの久子先生が老けすぎに見えた。でも昔の人は40代で孫とかいたわけだしそんなものか。

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