2023年2月23日木曜日

山田杏奈「早朝始発の殺風景」(2022)

2022年11月から12月にかけてWOWOWで放送された「早朝始発の殺風景」全6話を見る。青崎有吾による同名短編集(集英社)を原作とするドラマ。主演は山田杏奈奥平大兼

始発の電車、放課後に立ち寄ったファミレス、観覧車の中などで繰り広げられる高校生たちの気まずい会話青春密室群像劇。
演出は瀧悠輔、坂上卓哉。脚本は濱田真和。脚本監修として岡田惠和

第1話「早朝始発の殺風景」
けだるい朝、加藤木(かとうぎ)くん(奥平大兼)は高校へ通学。ナレーションによれば「濁った青春から僕たちが脱出するまでの物語」
昼休みに校長先生から校内放送。啄木町での通り魔事件への注意を促す。なぜか殺風景(さっぷうけい)さん(山田杏奈)がブチギレ顔。

加藤木と殺風景はなぜか5時半の始発電車でふたりきり。殺風景さんによれば「GW開けから毎日始発に乗っている。今日で10日目。」「でも加藤木くんと会うのは今日が初めて。今日はどうして始発に?」このふたりはなぜ始発に乗っているのか?

加藤木の言うことがいちいち殺風景には疑わしい。加藤木の話の違和感と矛盾点をいちいち突いてくる。まるで刑事のような眼差しで次々と質問してくる。
「ケータイ見せて」と迫ってくる。「キミは僕の彼女か?」「何も後ろめたいことがなければ見せれると思うけど?」
そして殺風景さんの恐るべき論理的推理力!まるで舞台芝居のような迫真の会話劇。
山田杏奈の目つきと口調がSっぽくてとてもいい。めちゃくちゃ鋭い。自分も学生時代にこういう子に精神的に拘束支配されたかった。

だが、加藤木も反撃。殺風景が始発で公園に向かう目的を推理し仮説として提示。
しかし、殺風景は衝撃の真相を告白。親友叶井(瀧七海)が公園で通り魔から理不尽な仕打ちを受けていた。殺風景は犯人を見つけ出しギタギタに切り刻むつもりだ…。

第2話「メロンソーダ・ファクトリー」
加藤木と殺風景は高校屋上で今後の捜査方針を相談。 
一方で同級生たち真田(吉川愛)、詩子(中田青渚)、ノギちゃん(尾碕真花)の仲良し3人組はファミレスで文化祭クラスTシャツ選定会議。

詩子は驚くべき秘密を抱えていた。これも驚きの脚本だった。
今回のメインキャスト3人はみんな演技が上手かった。それでも吉川愛の演技の自然さと上手さに圧倒された。山田杏奈も吉川愛もレベチの選ばれた存在だと思い知らされた。
第3話「夢の国には観覧車がない」
フォークソング部の遊園地での3年生送別会。寺脇(伊藤あさひ)が葛城(莉子)に告白しようと思ってたら、幹事の伊鳥(望月歩)とふたりきりで観覧車に乗る羽目に。伊鳥の狙いとは?という話。
1話、2話は衝撃的だったのだが、第3話はそれほどでもなかった。高校生ってここまで策士チェスプレーヤーみたいなの?

葛城さんがガチでフォークとニューミュージックが好きという設定がすごい。そんな女子高生いる?

第4話「捨て猫と兄妹喧嘩」
殺風景は叶井との想い出の観覧車から犯人を目撃。おとり捜査を提案するが加藤木から反対される。

麻(髙橋ひかる)は友人たちからカラオケに誘われたのだが、母の誕生日のために断る。友人から美味しいケーキ屋を紹介され母へお土産を買ったのだが、母は仕事で会食。
カラオケにも行けず、ひとりベンチでケーキになってしまう。「ケーキ美味っ」「でも、寒っ」
麻は捨て猫を拾う。久しぶりに会う兄直文(萩原利久)に相談。たぶん両親離婚で別々になってる。「直兄ぃの家で飼ってくんない?」「ムリムリ!」兄妹で口論。
なんか、このドラマの登場人物たちは誰も高校生に見えない。なんだかみんな大人っぽい。じつに色々なことに気づく。
この回もほぼ二人芝居会話劇。髙橋ひかるも個性的な顔してて演技が自然で上手。

第5話「三月四日、午後二時半の密室」
あっという間に卒業式シーズン。クラス委員の草間(藤野涼子)は先生から卒業証書を病気欠席した生徒に届けるようにたのまれる。仕方なく親しくもない煤木戸(茅島みずき)の家に届ける。

煤木戸はとても大人っぽいし意見をはっきり言うし取りつく島のない生徒。一方で草間は人がいい挙動不審おっちょこちょい。気まずいふたりの会話劇。
草間はやっぱり目ざとく色んな事に気づいてしまう鋭い名探偵。部屋を辞去しようというそのときに、風邪で数日寝ていた部屋らしくない違和感に気づく。
このドラマを見てると名女優は脚本がつくるものだなと思う。

最終話「啄木町の七不思議」
殺風景と加藤木はついに犯人と遭遇。叶井に写真を送って確認。間違いない。しかし犯人を罠にかけようとするそのとき、加藤木のおっちょこちょいのせいで犯人を取り逃がした?

あれ?なんだこの編集。すべて端折ったように話がイッキに飛んだ。ここで視聴者はふわっと放り投げられたような感覚。いったい何がどうなった?
犯人の自宅を突き止めた段階で推測できるけど。加藤木が何かを隠してる?殺風景を避けてる?

加藤木と殺風景の取った行動の答え合わせ。これはスッキリしない爽快感のない現実的解決。
それと犯人のキャラ造形が弱いと感じた。だがそこは深く描かなくていいという判断だったのかもしれない。
友人を暴行した犯人を追うというメインのストーリーに4本の日常系ミステリを絡めたドラマ全6話。
このドラマを作った人々は志が高い。すばらしいクオリティ。たぶん原作が良かったのかもしれない。脚本も演出もよかったかもしれない。多くの人に見られるべき作品。

第1話からめちゃくちゃ引き込まれた。山田杏奈の演技力に圧倒された。山田が素晴らしすぎて奥平大兼がかなり見劣りした。

主題歌はyutori「モラトリアム」

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