2023年2月9日木曜日

土屋太鳳「赤々煉恋」(2013)

土屋太鳳の主演作に「赤々煉恋」(せきせきれんれん)という映画もあるので見ておく。朱川湊人による短編ホラー小説集(創元推理文庫)のうちの1本を映画化したもの。
2013年12月21日に公開。監督は小中和哉。脚本は山野井彩心。配給と制作はアイエス・フィールド。

女子高生ヒロイン樹里(土屋太鳳)はまた月曜が来て気が重い。母親が秋本奈緒美さんだ。この女優を久しぶりに見た。
制服着て登校してるようで手ぶら。不登校か?近所の団地をぶらぶら。自分のお気に入りの場所に座ってるのだが、そんな場所にいれば誰もが怪訝な顔で見るだろ。

ああ、どうやらこのヒロインはすでに死んでしまっているようだ。幽霊なので誰も話しかけない。けど、自分になんとなく気づいてる人が吉田羊さんだ。
かつて自分が通った高校の教室にも行ってみる。だとすると学校は霊場なのかもしれない。幽霊は退屈なんだろうと思う。

で、ヒロインが自殺するに至った回想。ひきこもりの末にマンションで飛び降り。
生きてても死んでも人は孤独。かつての行動範囲をさ迷い歩くしかない。その感覚はリアル。

制服をコーラで汚されたクラスメートのミドリ(清水富美加)の身代わりで制服チェックをジャージでやりすごす。こんなゲシュタポみたいな教師がいるって80年代か90年代か。
高校1年のヒロインが好きだった潤也くんが吉沢亮。3人は屋上でランチする仲。
10年前だと吉沢亮はかなり子どもに見える。

樹里はミドリが潤也といつのまにか仲良くなってることに気づいて顔が曇る。ミドリから潤也へラブレターを渡されるように頼まれるのだが、明るくおどけて引き受ける。だがどうやら潤也にその気はないらしい。ミドリは涙。樹里はそんなミドリと一緒に泣く。そんな高校生によくある風景。

だが、樹里はひきこもるようになって不登校。あの明るかった少女になにが?なぜ自殺を?潤也もミドリも戸惑う。

幽霊樹里はなぜか自分以外の幽霊を見たことがない。だが怪物を目撃するようになっていた。それは心が弱った人間を自殺するように誘導する死神。樹里が虫男と呼ぶそれの声は故大杉漣さんだ。
こんな怪物が見えるのは自分で死を選んだ自分への罰?土屋太鳳の独白モノローグと街をさ迷い歩くシーンが続く。死はこんな無間地獄なのか。

樹里の母は大切な人を自殺で失った人たちの会に足を運ぶようになっていた。「自殺は殺人」「迷惑で愚か」「あの子を信じてたのに」という母の発言に幽霊樹里は反感。
「私のいちばんほしいもの、それは私に向けてくれる笑顔」だと悟る。死んでるのに。

樹里のことが唯一見えるリンゴちゃんが公園にやってくる。母親(有森也実)が負のオーラを出している。お金に困っている。子どもをひとり公園に置いて行ってしまう。
樹里はリンゴちゃんと一緒に楽しく遊ぶ。これは周囲の人が見てたらかなり異常に見えるかもしれない。なにしろ小さな子どもが見えない霊と話して遊んでるのだから。

買い物するからと子どもを置いていった母が手ぶらで帰ってきた。この母には虫男が取りついている。虫男は母娘に心中をするように導いてる。樹里は必死に引き留めようとするが実体がないので無力。
そこにベビーカーを押すミドリ(吉田羊)が通りかかる。ここで樹里から手紙を潤也に渡さなかったことが明かされる。吉田羊の役がなんのためにあるのかわからなかった。樹里の死後20年ぐらい経ってるってことか。

家では母親が一人で樹里の誕生日を祝ってる。なんと寂しい。こんなの大切な人を失ったことのある人は泣く。幽霊樹里も泣く。ここで母は樹里の声を聞いたような感じになる。「あなたを救えなかったママを許して…」「とってもさみしい」

翌朝、ミドリはマンションを見上げてつぶやく。「今日も樹里の夢を見た。あの頃、楽しかった」
これ、何かミステリーとホラー要素のある映画かな?と思ってた。まったくそうじゃなかった。自殺してしまったヒロインの後悔を映像化した非宗教的なしみじみ死生観映画。何が目的でこんな映画つくった?
若手アイドル女優の主演作としては主演女優をたくさん見れて良い作品。土屋がすっごく一人芝居を頑張ってる。女優鑑賞映像作品としては良い。なんかミュージックビデオみたいでもある。土屋太鳳が好きな人(そんな人をあまり見たことないけど)は一度見るべき。

主題歌はPay money To my Pain「Rain」

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