2023年2月10日金曜日

塩野七生「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」(1970)

塩野七生「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」(1970)を新潮文庫(平成16年46刷)で読む。
110円だけ握りしめてBOでじっくり選んで連れ帰った一冊。塩野七生を読むのはこれが初めて。この作家のほぼデビュー作で毎日出版文化賞を受賞した代表作。タイトルがとてもかっこいい。

チェーザレ・ボルジア(1475-1507)を自分はなんとなく名前しか知らなかった。これも世界史のお勉強のために読む。このマキャヴェッリ「君主論」のモデルとなった人物を、おそらく日本人の多くがこの本を読んだことで知ったに違いない。

シエナのカンポ広場で駿馬を競わせる大会に颯爽と現れるピサ大学に通うスペインの血をひく青年がチェーザレ・ボルジア。父は神の代理人ローマ法王アレクサンドル6世。本来カトリックの聖職者に子はいないはずだがそれはタテマエ。なんとでもなる。

17歳なのにバレンシア大司教。そして、父を補佐するローマで緋の衣を着る枢機卿に選ばれる。チェーザレは「若者が好みそうなあらゆることに興味を持ったが、神学をはじめとする学問だけはしなかった。」という点だけは好感をもったけどw、ようは父親の権勢によって偉くなった青年。

この時代のイタリアは教皇領、ナポリ、トスカーナ、ベネチア、ミラノ、フェラーラなどに別れていた。ミラノ公国はルドヴィーコ・スフォルツァ。フィレンツェではメディチ家内紛、サヴォナローラの時代。そしてフランス王シャルル8世によるナポリ王位を要求するイタリア戦争。

あれ?シャルル8世というとアンボワーズ城の梁に頭をぶつけて死んだ王という印象が強かったので、てっきり背が高いのかと思っていた。逆だった。背が低く貧相だったらしい。イタリアの価値観からすると王になれるような威厳がないらしい。騎士道と十字軍に憧れる困ったフランス国王。しかも強欲。

この本、てっきり時代小説みたいなものを期待していたのだが、ほぼ当時の歴史家と資料から視点。なので司馬遼太郎のような盛った面白くかっこいい会話台詞などが皆無。ずっと客観的な事実の列挙。

なぜチェーザレとその部下、傭兵からなる軍が、エミーリアロマーニャやトスカーナの小豪族、小僭主たちを次々と刈り取っていけたのか?ナポリのアラゴン王家、ミラノのスフォルツァ家を追い落とすことができたのか?そのへんはよくわからない。
織田信長だってのし上がる過程には信玄や謙信といった難攻不落のライバルがいた。だがチェーザレはほぼすいすいと敵と領地を切り取る。

佐藤賢一「王妃の離婚」にも登場するフランス王ルイ12世がチェーザレの後ろ盾でもあったのだが、あまりに勢力が増すと煙たくもなってくる。そして父アレクサンドル6世が死去するとチェーザレの没落が始まる…。

自分がざっくり説明すると、父親の権威を借りて増長し、イタリアに「俺王国」を作ろうとした一代記。
チェーザレ・ボルジアという人に関心がある人は何か他の資料も読むことをオススメする。同時代にマキアヴェッリ、レオナルド・ダ・ヴィンチがいる。この本のボリュームと速度ではあまり頭に入ってこないまま終わった。

0 件のコメント:

コメントを投稿