2023年2月26日日曜日

集英社新書「英仏百年戦争」佐藤賢一(2003)

集英社新書「英仏百年戦争」佐藤賢一(2003)を読む。小説すばるに2002年1月から2003年5月号まで連載されたものを大幅改稿して新書化したもの。佐藤先生の本はどれもわかりやすく面白いので今後どんどん読んでいく。

自分つい最近まで百年戦争ってイギリスとフランスが100年戦争してたんでしょ?ぐらいの知識しかなかった。
だがそれは間違っている。百年戦争はフランス語を話すフランス人同士の戦争。そもそもこの時代にイギリスという国は存在しない。しかも、ブリテン島南部のイングランドはフランス国王に臣従するノルマンディー公国の属領。

ノルマンディー公国のギョーム2世が奪い取ったイングランドを、ウィリアム1世が臣下たちにキッチリ分け与えたことで誕生した王国がイングランド。フランス王とイングランド王は対等かもしれないが、フランス王からするとノルマンディー公は格下。

ヴァロワ伯フィリップがフィリップ6世となったとき、イングランド国王エドワード3世が「ちょっと待て。フランス王位は俺のものだろ」と言ってきた。フランスは古ゲルマンの部族法(サリカ法)によって女子は王権を相続できない。だが、エドワード3世の母イザベルはフランス国王フィリップ4世(美男王)の娘。当然に自分に王位継承権があると主張。

スロイス海戦クレシーの戦いでフランスは惨敗。イングランドの領地を臣下に分配して王権の強固なイングランドに対して、フランス軍は寄せ集め。長弓隊のイングランドに騎馬で立ち向かったフランス側はひたすら死者を増やしてしまった。
ポワティエの戦いでは黒太子エドワードの部隊に国王ジャン2世が捕虜になってしまう始末。王太子シャルル(後のシャルル5世)は巨額の身代金(国家賠償)を払うために奔走努力。

百年戦争は和平の成立してた期間も長い。
しかし、ヘンリー5世の登場で戦争再開。英語よりもフランス語が苦手という初のイングランド国王がヘンリー5世?この王になってからイングランドによる対外侵略戦争へ?
イギリスでは百年戦争はフランスに勝利したことになっていた?それはシェイクスピアのせい?自分はまだシェイクスピアの「ヘンリー5世」を読めてない。

アンジューもメーヌも、ノルマンディーもガスコーニュも、ブルターニュもブルゴーニュもロレーヌもまだフランス王国ではなかった。歴代の王たちがだんだん切り取って行った。それが王様の仕事。
ブルゴーニュ公国の女相続人マリーが神聖ローマ皇帝マクシミリアンと結婚しフランドル伯領保持に奮闘しなければ、オランダ・ベルギー・ルクセンブルクは今もフランスだったかもしれない?

自分は今何かを取り戻すかのように、世界史の本をじゃんじゃん読んでいる。一度読むだけでは覚えられないが、同じ箇所をいろいろな本で何度も読むことで、たぶんだんだん頭の中でイメージがクリアになっていく。

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