2023年2月18日土曜日

横溝正史「犬神家の一族」(1972)

横溝正史「犬神家の一族」を読んだ。ついに読んだ。
市川崑の映画版(1976)を何度も何度も見てよく知ってる作品なのでもう読まないでいいかと思ってた。昨年の夏ごろに110円で平成18年角川文庫改版「金田一耕助ファイル5」が売られていたのを見つけてつい手に取って連れ帰った。

「キング」1950年1月号から1951年5月号まで掲載された作品。なんと1972年に角川文庫化されるまで単行本になってなかった?!
綾辻先生によればこの作品も発表当時はあまり評判がよくなかったらしい。以後、横溝正史は作風が世間の求めるものと合わなくなる。時代は松本清張のような社会派ミステリーが主流。

そして1976年の映画化で突如世間は横溝正史大ブーム。このころ国鉄のディスカバージャパンも始まってた。戦後経済成長がひと段落。ようやく日本人はあの時代を回想し懐かしむことができるようになっていた。古い因習に支配された田舎に目を向ける余裕ができた。(この時代は超能力、心霊写真、ノストラダムスの大予言までもがブーム。)

実は自分はこの本を高1ぐらいのときに持っていて読んでいた。当時は杉本イラスト表紙の角川文庫だった。何度も引っ越しするうちに無くなってた。たぶんどこかで処分した。また再びこうして買い求めてる。この金田一耕助ファイル版は巻末にまったく解説がなくて困る。やはり旧版を買い求める方がよかった。

この作品も他の横溝作品と同様に、映画と原作で大きく違っていることが多い。自分は市川崑版のテンポよく整理された脚本と、適切に大げさで劇的な演出が好き。だがそれでもこの原作本もこれはこれで好き。

映画では犬神家は信州で一代で成り上がった製薬業だったのだが、原作では製糸業だった。
今回読んでみて、犬神佐兵衛翁の遺言状が意外に長いなと感じた。
あと、昭和20年代にはもう「モーションかける」って言葉があることが意外だった。

ちなみに自分が「衆道の契り」という言葉を初めて知ったのがこの作品だった。映画を初めて見たときは人間関係がよくわからなかった。

映画では岸田今日子さんが演じてた琴の師匠の正体に、原作ではとある重要キャラが重ねられてて大びっくりだった。
那須神社の神主さんが慎みがなく思慮浅く宗教者にしては他人の秘密というものを重要に考えてない。このキャラの行動が犯人に影響を与えていたことも、今回初めて知った。

犬神家の系図が掲載されている。佐清が29歳、佐武が28歳、佐智が27歳、野々宮珠世が26歳、小夜子が22歳だと知った。

島田陽子さんの珠世はよかった。今現在、絶世の美女珠世を演じられそうな女優が思い浮かばない。今現在26歳の女優というと橋本愛、小松菜奈が該当する。27歳だと川口春奈。25歳だと中条あやみ、芳根京子。
だが、自分にとって絶世の美女と言ったら「海街diary」の撮影当時27歳のまさみしかいない。

PS. 市川崑による映画「犬神家の一族」(1976)で那須ホテルとしてロケ地に使用された長野県佐久市の井手野屋旅館さんが経営者夫妻高齢化により売却されるらしい。

実は数年前からここに泊まりに行くことを考えていた。だが、周囲に何があるのか?どこに足を伸ばそうか?などぼんやり考えていたらコロナになってしまった。ワクチン4回目打ったし、春になったら行こうかな…と考えてた矢先にこのニュースを目にした。

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