2023年2月12日日曜日

イーデン・フィルポッツ「赤毛のレドメイン家」(1922)

イーデン・フィルポッツ「赤毛のレドメイン家」(1922)武藤崇恵新訳の2019年創元推理文庫版で読む。
THE RED REDMAYNES by Eden Phillpotts 1922
この本は江戸川乱歩が絶賛したことで早くから日本でも知られていた。ちなみにフィルポッツはアガサ・クリスティーの隣家に住んでいて、十代のアガサにミステリー小説の助言をした人としても知られている。
実はこの本(宇野利泰の旧訳版)を高1ぐらいのとき買って持っていた。読まないうちに何度かの引っ越しの後に見なくなっていた。時空を超えてようやく読む機会を得た。

イーデン・フィルポッツ(1892-1960)は多くの作品を残したのだが欧米では忘れ去られた存在らしい。なのに日本で最近になって新訳がでたことは驚き。発表から100年経って読む。

この物語の主人公はスコットランドヤードの刑事ブレンドン。35歳の若さで出世し貯金も貯まって田舎で鱒釣り休暇中。ずっとこの若い刑事主観。この人がすごく思慮分別がある紳士。謙虚と自制心を英国人そのもの。

この刑事が絶世の美女とすれ違う。この美女がこの物語のヒロインであるジェニー・ペンディーン。
祖父がオーストラリアで財を成したレドメイン家。長男ヘンリー夫妻は海難事故ですでに死亡。その一人娘がジェニー。25歳なのに18歳に見えるという美女。

ジェニーの夫マイケル・ペンディーン(貿易商)は体が弱く、大戦中の兵役の件でジェニーの叔父ロバート・レドメイン(元大尉)と険悪。ジェニーとマイケルの結婚にも反対。
しかし仲直りをし一緒に出掛けていったのだが、バンガローが血の海。周辺の目撃証言によれば、ロバートは大きな麻袋をバイクに乗せて出かけて行きどこかに遺棄し、いちどアパートに戻ってから逃亡したらしい。

休暇中の刑事ブレンドンにジェニーから助けを求める手紙。この若い刑事はジェニーに恋してしまう。休暇中だけど地元警察と協力して捜査開始。
英国警察網の全力捜査によってもマイケルの死体が見つからないし、ロバートの足取りがまったくつかめない。
ロバートの婚約者とその両親によれば、ロバートは戦争神経症?さらにもとから短気でカッとなりやすい性格。

ジェニーはレドメイン家の3男ペンディゴー(貨物船の元船長)の家で過ごす。ドリアというイタリア人青年をボート操縦士に雇っている。ドリアが超ハンサムでブレンドンはジェニーを取られるんじゃないかと不安。

ロバートが逃亡したまま半年。だが突然ペンディゴーの家の周囲でロバートが目撃される。逃亡生活によって体が弱っているようだ。海岸の崖の窪みに隠れているようだ。
ロバートとペンディゴーの2人だけの会談がセッティングされるのだが、またしてもロバートはペンディゴーを殺害し逃亡?そしてまたしても死体もロバートも消え失せてる。

そして舞台はイタリア。陽光のコモ湖。レドメイン家最年長の古書蒐集家アルバートも危ない!?

なぜか中盤からブレンドンに代わって、アルバートの親友で高名なアメリカ人の元刑事ピーター・ギャンズが探偵として登場。ブレンドンに助言していく。ギャンズのほうが名探偵に相当。

ギャンズが登場してから探偵としてブレンドンへの講釈会話が長い。犯人をはめるための心理戦が始まる。

なにせ100年前の古典的作品。自分としては登場人物がわりと少ないので犯人が絞り込めて早々にわかってしまい、長く感じた。どう説明してもネタバレになってしまうのであまり詳しく話せない。
この作者は単純なミステリーに終わりたくなくて文学的にしたかったようだ。

ラストは犯人の独白手記が長々と続く。事件の背後であったことを詳細に説明。
江戸川乱歩が「万華鏡が、三回転するかのごとき」と激賞。昔から日本では評価の高い作品だが、それは言い過ぎのような気もする。実際年々評価を下げ、今ではほとんどフィルポッツは忘れられている。

0 件のコメント:

コメントを投稿