2022年12月12日月曜日

岩波ジュニア新書817「森と山と川でたどるドイツ史」(2015)

岩波ジュニア新書817「森と山と川でたどるドイツ史」池上俊一(2015)を読む。歴史に関する本は何度もいろんな角度の本を読んでだんだんわかってくる。戦国時代のことは大河ドラマや司馬遼太郎でだんだん知識を積み上げた。

岩波ジュニア新書って内容はぜんぜんジュニア向けじゃない。むしろ大学生以上の大人に向けて書かれた本じゃないのかって思う。このドイツ史本も高校世界史の範囲を超えていて、18以前の自分が読んだらちんぷんかんぷんだったに違いない。

ドイツの歴史を森、山、川との接し方から解説する一冊。自分、そのへんの観点はまったくの盲点だった。この本を読まなかったら、ドイツ人がじゃがいもを食べてる経緯がわからなかった。ドイツ農民戦争と三十年戦争で荒んだ農村部に新大陸からの新しい食物「じゃがいも」を育てるよう推奨したのは啓蒙専制君主のフリードリヒ2世だった。

1871年のプロイセン・ビスマルク主導のドイツ帝国誕生とその後の重工業の発展は、ドイツの山(鉱山)と森(燃料、住宅建材)、そして河川(運輸)がガッチリ噛み合った結果。イギリスと違って軽工業をすっとばしていきなり鉄鋼。
そのへんの説明がとても上手いしわかりやすい。

イギリス、フランスと違ったのは啓蒙主義が下に行き渡らない。政治に参加する中間層のボリュームが薄かったのがドイツ。
ビスマルクは民主主義や議会を求めないし労働運動や社会主義を抑え込んだ。そのことは後の軍国主義とその崩壊の悲劇をまねく。

森、山、川、自然との接し方がドイツ人のアイデンティティー。山に登れば何か霊力が得られる。ゲーテは温泉を愛した。ワンダーフォーゲルを始めたのもドイツ。ドイツ民族は最初から森と山に人間の治癒能力を高める何かを求めていた。
クラインガルテン(市民菜園)について自分はいままでまったく知らなかった。ドイツ人にはそんな秘密があったとは。

高校世界史が教えてくれなかった切り口でドイツ史とドイツ人を知ることができた。この本も大学生、社会人が読むべき良書だった。

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