2022年12月18日日曜日

集英社新書ヴィジュアル版「放浪の聖画家 ピロスマニ」(2014)

自分、今年になって初めてグルジアの国民的画家ピロスマニを知った。知ったといってもやっと画風と名前と肖像写真を覚えた程度。なかなか名前を覚えられなかった。スピロマニ?スマピロニ?今もとっさに出てこないw
何かピロスマニについての書籍はないかな?と心でアンテナ張ってて目に留まった本がこれ。
集英社新書ヴィジュアル版「放浪の聖画家 ピロスマニ」(2014)
おそらく、日本人の中で相当に早くピロスマニの絵とグルジア文化に接してその魅力を伝えていた絵本作家はらだたけひで氏による手に入りやすく決定版的な一冊。

ニコ・ピロスマニ(ニコロズ・ピロシュマナシュヴィリ Nikoloz Pirosmanashvili 1862-1918)
自分はこの10年絵画展にまったく出かけなくなったし美術に興味なくなってて、まったくピロスマニ人気がじわじわ高まってることを知らなかった。この集英社新書の存在にも気づいてなかった。

ピロスマニは幼いころに孤児となり流浪。チフリス(トビリシ)で酒とパンのために看板に絵を描き貧困のうちに死んでいった画家。独学で画を学んだために記録が少なく謎も多い。今もグルジアから最新研究の成果がたまにやってくる。生まれも死んだときの状況もよくわかっていない?!

死後に急速に人気が高まって国民的画家になった人。ピカソは1920年代からピロスマニを高く評価。
だがスターリンの全体主義ソ連においてピロスマニの画風は民族主義的で危険な香り。

飲んだくれの変人と見られもしたのだが、飲む量はグルジア人としては普通。「彼の手からは悪ではなく善が出ていた」「彼の胸には天使が宿っている」と愛され尊敬もされたという。その人となりと素朴な人間性のすばらしさは現代人には感動的ですらある。

西側で最初の個展は1969年3月のパリ装飾芸術美術館での大回顧展。日本では1977年東京国立近代美術館での「素朴な画家たち」展。このときピロスマニの絵画が4点展示。1986年には西武美術館でピロスマニ展。

日本でピロスマニが知られるのは「百万本のバラ」。1905年にフランス女優がグルジアに巡業に来たときピロスマニは恋をして街中のバラを買い彼女の宿の前をバラで埋め尽くしたというエピソードをモデルに、1982年にロシアのアンドレイ・ヴォズネセンスキーが作詞、ラトヴィアのライモンズ・パウルスが作曲、ロシアの人気歌手アーラ・プガチョワが歌って大ヒット。そして加藤登紀子が訳詞してカバー。
このエピソードは実際にあったかどうか疑わしいらしいけど「女優マルガリータ」は実在した?!1969年パリの回顧展にマルガリータを名乗る老婦人が来場しピロスマニの思い出を語ったという。

黒いキャンバスを使うのも個性。貧しさも理由かもだが使用する絵具の色は数種類のみ。ピロスマニはイコンの伝統を受け継いだ平面的で遠近感のない素朴な画風でグルジアの貧しい人々や動物、酒宴の記念写真的な風景絵画、酒場兼食堂(ドゥカニ)の看板などを描いた。
グルジア国民にとって誰もがそれぞれのピロスマニを持つ。映画になり切手になり紙幣になった。

この本から多くを学んだ。今の自分が持つピロスマニ知識のすべて。前頁カラーで掲載作品も豊富。お勧めしたい。

ソ連時代の映画「放浪の画家ピロスマニ」(1969 ゲオルギ・シェンゲラヤ監督)もいずれ見たい。セルゲイ・パラジャーノフ監督の短編映画「ピロスマニのアラベスク」(1985)は見ることが難しそうだ。

ピロスマニの絵画を現在の我々が見ることができるのは当時からピロスマニを正しく評価できた人がいたおかげなのだが、その一人にミハイル・チアウレリというグルジア人俳優で脚本家で後に「ベルリン陥落」(1949)で知られる映画監督がいるのだが、この人の娘が、パラジャーノフ作品に女優として出演しているソフィコ・チアウレリ!?

グルジアはアルメニアに次いで世界で2番目にキリスト教を国教とした古い王国。国名はグルジア正教の守護聖人聖ゲオルギに由来するらしい。古代ギリシャ語の農業(ギオルグ)に由来するという説もあるらしい。

ロシア語読みのグルジアという呼び方をこの国民は嫌うようだ。日本ではようやくジョージアという国名が浸透しつつあるけど、自分はまだ慣れていない。アメリカ合衆国ジョージア州と混同するのでジョージアと呼ぶのに抵抗がある。
今からでも遅くない。国民が自国を呼ぶサカルトヴェロか、ギリシャ風にゲオルギアと呼ぶように変えたい。

駐日ジョージア大使のツイッターによればジョージアワインの日本への輸出量が昨年比190%と爆増らしい。ジョージアワインの「ピロスマニ」を飲んでみたい。陶器ワインボトルのデザインが味がある。以前、魚の形をした別のワインボトルを見たことがあった。次に見つけたときは買いたい。
あと、ジョージアのアルファベットをこれからゆっくり覚えたい。

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