2022年12月14日水曜日

清水潔「桶川ストーカー殺人事件―遺言」(2000)

清水潔「桶川ストーカー殺人事件―遺言」(2000)を読む。平成16年新潮文庫版で読む。
この事件も警察組織がいかに醜悪な自己保身装置であるかを暴いた志の高いジャーナリズム。

このニュースと真相も当時の報道番組を見てた。犯人が世間を震撼させるほどに執拗に粘着質。まるで映画やドラマでしかみないようなサイコパスストーカー男と、その手下のストーカーチームの異常さ(誹謗中傷ビラ、電話番号入り援助交際カードの配布、父の職場にも誹謗中傷)にも衝撃を受けたのだが、なんといってもそれらを上回る上尾署と埼玉県警の異常性。

当時、自分もTBSの「ブロードキャスター」とか、テレ朝の鳥越俊太郎「ザ・スクープ」とかでみて憤慨してた。
だが、その取材と犯人を追い詰めたのは警察でも大手マスコミでもなく、すべての震源は清水氏とFOCUS編集部だった!

清水氏とそのチームが他の事件取材もしながら頑張った。第一報では通り魔の犯行とされたのだが、聞き込みを続けているうちに、被害者猪野詩織さん(21)の友人たちに接触し、「私が殺されたら犯人は小松和人」と遺言を残してたことを知る。
清水氏は池袋や西川口に張り付いて聞き込みしたり犯行グループの顔写真を撮影したりと苦労して犯人逮捕に大貢献した。そのへんのスクープと逮捕Xデーに関してはギリギリの駆け引き。

樋川署の捜査員は100人いたそうなのだが、清水氏らが池袋の風俗店関係者を聞き込みしてるのに、不思議なことに誰も刑事が聞き込みに来ていない。まるで警察の存在感がない。清水氏ら数人のFOCUS編集部が独自に犯人グループにたどり着く。
撮影した顔写真が本当に探してる人物か確かめるために関係者に見てもらう写真を渡す場面とかまるでスパイ映画。

記者クラブに入っていない週刊誌記者は、警察の会見場所に入れてもらえない。警察発表とただそれを垂れ流す大手新聞メディアに不信感。すべて独自に調査していく。
清水氏がいなければ、被害者女性猪野詩織さんは今も警察リーク情報のようなブランド好き派手好き風俗嬢のようなイメージが固定してたかもしれない。

とにかく警察糾弾パートは読んでいて酷い話で胸糞悪すぎでイライラの極限。
小松兄弟と殺害実行犯久保田らストーカーグループよりも、本当に恐ろしいのは上尾署と埼玉県警だった。
なぜ絶対に間違いを認めないのか?まるで通常の日本人と異なる思考回路を持っていて不思議。犯人たちよりもサイコパス。

清水氏はずっと怒りのデスロード。終盤は犯人たちよりも警察が敵。警察は清水氏にナメきった対応。読んでる我々も怒り心頭。

FOCUS連載当時から記事の読者も警察へ非難の声があがった。この「遺言」という本は今も多くの人々に読まれ、警察への批判と怒りの声が鳴りやまない。
てか、警察発表を鵜呑みにして垂れ流す大手新聞社はなんなの?自分たちの仕事を世間様に胸を張って言えるの?

まず警察は清水氏に謝罪しよっか?てか、何か情報を教えてくれるかもしれないんだから、もっと丁重に話を聴くべき。てか特別相談役とか顧問とか監督官的な役職を与えていいほどの貢献度。

日本中の事件を追う清水氏は、埼玉県警の他に京都府警を「事件解決はロクにできないのに気位だけは高い」と批判。北海道警は「たとえその所轄が流氷が接岸するようなオホーツク海を臨む町にあっても、裏山にヒグマが出そうな駐在所でも、口をそろえて『道警本部の公報へ行ってください』と言う」と批判。

そもそもなんで話を聴きに来た雑誌記者ジャーナリストに誠意をもって対処しない?お互いに有益な情報を交換しない?
上尾署が必死になって守ろうとしたのは「楽な仕事」や「名誉」や「地位」であって市民では決してなかった…
そうか。自分たちの楽な仕事と名誉と地位を毀損する可能性があるやつらは煙たい存在か。
話を聴きに来た雑誌記者をめんどくさそうに追い返すとか最低だし、公務員としての資質を欠いている。プライドとかいらないし、勝った負けたとか思うなよ。もうそういうの今の世代でやめようよ。

必死に助けを求めてきた女性を見殺しにしたのに、民事の損害賠償訴訟では刑事事件捜査のために押収した証拠(都合のいい箇所だけ抽出)で裁判を戦うとかも異常。
埼玉県警はたぶん市民を敵だと思ってる。埼玉県警を解体してほしい。廃止するべき。公儀に十手を返納して関係者は腹を召されるべき。

この本も志の高い調査報道ジャーナリズムの感動の名著。埼玉県民は全員読むべきだし、警察官採用試験を受けようという人も全員読むべき。

PS. 現在放送中のフジ月10ドラマ「エルピス」の展開が清水潔氏の「殺人犯はそこにいる」ベースなのだが、警察が被害者女性のネガティブ情報をタイミングよくリークするシーンもあって震えた。桶川事件と同じ。

桶川出身のシンガーソングライター新山詩織はこの本を読んだだろうか。自分はこの事件を聞くと詩織つながりでちょっと新山のことを想ってしまう。

0 件のコメント:

コメントを投稿