スパルタカス(?-BC.71)って共和制ローマ時代に反乱を起こした剣闘士ということぐらいしか知らない。日本では世界史教科書に1行ぐらい記述がある程度でほとんどの人があまり詳しくない。
けど、その歴史的な立ち位置から社会主義国ではよくインスパイアされた作品を見かける。1919年にドイツで起こった武装蜂起も「スパルタクス団蜂起」。
原作はハワード・ファストによるスパルタクスの反乱をテーマにした小説。カーク・ダグラスが製作総指揮・主演で映画化した歴史スペクタクル映画。
脚本はダルトン・トランボ。この人は戦後すぐマッカーシーの赤狩りに遭った人。音楽はアレックス・ノース。
そして監督はスタンリー・キューブリックなのだが、ハリウッド超大作にありがちな大モメ降板騒動政治劇の末に連れてこられたやっつけ仕事だったらしく、キューブリック本人はこの作品を自身の監督作とは認めていないという、なんとも微妙な立ち位置の映画。
映画冒頭から壮大な序曲。そして圧倒的物量のエキストラを動員した共和制ローマ時代のリビアでの奴隷制強制労働現場。
トラキア人奴隷のスパルタカス(カーク・ダグラス)は鉱山の荷運び中に倒れた奴隷を助けようとしただけなのに衛兵に打たれて反抗。足首に噛みつく。
餓死処刑されようというそのとき、鉱山に剣闘士の卵を探しにきた剣闘士養成所主バティアトゥス(ピーター・ユスティノフ)に見出さる。剣闘士になれる素質は歯?!
海を渡り牛に運ばれカプアにあるバティアトゥスの屋敷へ。こいつは奴隷からスカウトした剣闘士を育てて売って儲けてる。連れてこられた奴隷たちは足の裏に焼き印を押される。反抗的な目をしてるからと教官から目を付けられる。
剣闘士みたいな娯楽用グラディエーターを育てて無駄に死なすよりも兵士として育てたほうがいいのに。訓練がマシンを使ったアホ訓練。
え、剣闘士候補生には女奴隷が与えられるの?女奴隷のバリニア(ジーン・シモンズ)がスパルタカスの地下独房に入れられる。なんか女奴隷たちがみんな老けている。
女を抱こうというそのときも主人たちに観察される。「獣じゃないんだぞ!」と怒り心頭。女は部屋から出される。この女奴隷とはその後目配せしたりそっと指を触れ合うような仲。
そして訓練の日々のある日、大物軍人政治家クラッスス(ローレンス・オリヴィエ)ら貴人たちが養成所にやってくる。剣闘士同士の真剣試合観覧という無理難題を所望。バティアトゥスはここで殺し合いをすると陰気になるからと断るのだが、クラッススは金で強要命令。
婦人たちが盃片手に「あれがいいわ」と選んだのが黒人のドラバとスパルタカスら4人。ここ、すごく嫌悪感。金持ちの道楽で人が死ぬ。
スパルタカスは黒人剣闘士ドラバ(ウディ・ストロード)と闘う。激しい闘いの末とどめを刺すというときに殺すことをためらう。貴婦人たちが「殺せ」と叫んだそのとき、三又の槍を観覧席に投げつけクラッススらに襲い掛かる。これはほぼ自殺行為。衛兵によって殺され見せしめとして腐敗するまで逆さづり。酷い。(日本の闘牛や闘鶏、闘犬は相手を殺すまでやらないのに)
クラッススは接待に出た女奴隷バリニアを購入。売られて行く。
ついに怒り沸点のスパルタカスは他の剣闘士と協力して教官と衛兵を殺害。殺人マシーンとして訓練してるのだからそうなる。
養成所を制圧。こいつら人間に対してやっていい限度を超えていた。いい気味。日本経団連や自民党、竹中平蔵もこうなればいいのに。
ここまでで映画開始1時間。
クラックスと権力争いをしてる元老院のグラッカス(チャールズ・ロートン)はグラブルス(ジョン・ドール)に歩兵6部隊を与え反乱鎮圧に向かわせる。ジュリアス・シーザー(ジョン・ギャヴィン)をローマ守備隊の司令官に任ずる。
ベスビオ山中に立てこもった反乱軍は周辺の街を荒らしまわる。
かつて自分たち剣闘士を虐げたバティアトゥスらを捕らえて剣闘士として戦わせる仕返し。
だがスパルタカスは制止する。ローマ人に成り下がるのか?バティアトゥスらを追放。
そのころクラッススはシチリア総督から贈られた奴隷詩人アントニウス(トニー・カーティス)が古典詩に詳しいことを知って側に置く。カキとカタツムリが好物だという話をしたり、ローマの恐ろしさを説いて教える。だがアントニウスはクラッススが独り言を言ってる途中で逃亡w なんだこのシーン。
奴隷たちを解放吸収しながら大軍団を形成。このへんの描き方がまさに革命。かつて奪われたバリニアとも再開。スパルタカス軍が気さくで陽気なリーダーと愉快な仲間たち。
スパルタカス軍に加わった詩人アントニウスは軍事訓練受けつつ手品を披露する娯楽担当。だが文字が読めるので重宝。スパルタカスの側近になる。
スパルタカスを奴隷とナメてかかったグラブルスのローマ軍は夜間の奇襲攻撃でボロボロに。ここで昔の大長編映画によくあるインターミッション。
大軍を失いローマに逃げ帰ったグラブルスはローマを追放。
反乱軍は同じくローマと戦っているキリキア海賊船でローマを脱出しそれぞれの故国へ帰る算段。ブリンディシウム目指して南下の大移動。まるで出エジプト。ローマ軍団を次から次へ打ち破る。それは楽しい楽しい行軍。
グラッカスは奴隷反乱軍がローマを出れば政敵クラッススの権力が高まることもなく丸く収まるからと、海賊と裏で交渉。スパルタカス軍を邪魔せず国外脱出させようと図る。
だがスパルタカス軍はブルンディシウム直前で、クラッススの買収によりキリキア海賊は船がないことを知らされる。さらにクラッススの援軍としてスペインからポンペイウス、ルクルスの軍団が上陸。挟み撃ちにされる模様。一気に絶体絶命。
ついにクラッススは元老院筆頭執政官という権力を握る。8個軍団を率いてスパルタカス軍討伐へ。
スパルタカスはローマに進撃して一気に片を付ける決意に転じる。両陣営の演説シーンが交互に挟まれる。
クラッススはスパルタカスを見つけ出し捕らえることにこだわる。
そしてスパルタカス軍は平地で普通に会戦。強大なローマ軍と援軍に敗北。老若男女に至るまで大量殺戮。
このシーンのエキストラ人数がものすごい。
スパルタカス軍兵士の生存者6000人は全員がアッピア街道で磔刑。街道沿いに延々と十字架。恐ろしい風景。この世の地獄。
アントニウスとスパルタカスの剣闘は残酷。勝ったほうが磔刑。自分が苦しいほうを選ぶため相手が楽に死ねるように胸を刺そうとする。
反乱軍の全滅。スパルタカスは結果として多くの奴隷たちを勝ち目のない戦争に巻き込んで死なせてしまった。
クラッススってこんな独裁者だったのか?古代ローマとはこれほどまでに残虐だったのか。絶望すぎるバッドエンド。こんな映画を誰が見たいのか?バリニアと子どもは生き残ったことだけが救い。
PS. 映画で描かれないその後のクラッスス(BC.115?-BC.53)の最期が怖い。パルティア侵攻で捕獲され、溶かした金を口に注がれて殺されたという…。それは大量殺戮者にふさわしい最期。プーチンにもこれぐらい厳しい処断と最期を望む。
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