2022年12月2日金曜日

アガサ・クリスティー「春にして君を離れ」(1944)

アガサ・クリスティー「春にして君を離れ」(1944)を早川書房クリスティー文庫(2004 中村妙子訳)で読む。ついに読む。私的クリスティーマラソン84冊目。
ABSENT IN THE SPRING by Agatha Christie 1944
これはミステリー小説でなくメアリ・ウェストマコット(Mary Westmacott)名義で発表された恋愛小説。
これを読むのは最後でいいか…と思っていたのだが、わりと世間の評判がいいし、サスペンス要素があるらしいので期待して読む。

イラクにいる娘バーバラが寝込んだのでお見舞いと身の回りの世話にやってきたヒロイン・ジョーンはたぶん40代後半(孫がいる)だがほっそりして顔にしわもなく30歳ぐらいに見える美人らしい。3人の子どもも独立し結婚し、夫の弁護士事務所も順調に経営発展。人生なにもかも上手くいってる。

バグダッドで女学校時代の旧友のブランチと再会したのだが、まるで60歳ぐらいに老けていてショック!「獣医なんか」と結婚してしまったせいで落ちぶれて、しかも品がない。

そしてロンドンに帰国するために悪路を車で移動するのだが汽車に送れてしまう。週3回の便があるのだが、線路が寸断して数日トルコ国境のレストハウスでで足止め。

周囲に何もないので暇。散歩したり友人に手紙を書いたり…。インド人がアラブ人少年を雇って経営する宿泊所の食事が毎回同じ缶詰。読む本もない。

そして以後ずっと、ジョーンによるこれまでの人生の回想と自問自答。
夫ロドニーが弁護士事務所勤務に嫌気と過労で「農場経営やりたい…」とか言い出したときは必死の反対。
息子は弁護士にならずに農学校へ行きローデシアに行き果樹園をやって勝手に結婚。
長女エイヴラルは少女時代から反抗的で母を「何もしてないよね?」と見下す。20歳も年の離れた医師と恋仲になったときは母激怒。
末娘バーバラもイラクの土木業者と結婚してしまった。

読んでも読んでも面白くなってくれない。厳格な両親と厳格な女学校で育った堅物イギリス婦人の、これまでの人生で起こった不快な出来ごとの回想と幻想が延々と続く。
この夫人が気位が高くてめんどくさい。夫ロドニーはちょっとぼんやりしてるけど、心優しい紳士だし常識人。新しい世代の若者にも理解がある。人生経験もある。
結局、夫婦はお互いのことがわからないよね?というテーマか。

老婦人作家が老婦人を主人公に老婦人読者に書いたような文芸小説。おそらく男性読者には面白さがわからないかと思う。

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