朽木ゆり子「盗まれたフェルメール」新潮選書(2000)を読む。美術絵画盗難事件に焦点をあてた一冊。
過去のフェルメール絵画盗難ケースを紹介。
1971年、アムステルダム国立美術館所蔵「恋文」はキャンバスからナイフで切り取られるという最悪な損傷を負ってしまい、修復には大変な時間と労力がかかった。
1974年、ラスボロー・ハウス(アイルランド・ダブリン)から盗まれた「手紙を書く女と召使い」も擦過傷など相当なダメージ。
1990年3月のガードナー美術館(ボストン)から盗まれた「合奏」に至っては今日まで所在不明。
この盗難事件が偽警察官によって学生アルバイト警備員がしてやられるという酷いもの。しかも個人コレクションを自宅で展示する美術館。収支がカツカツで盗難保険にも入っていなかった…。
美術館や個人宅から美術品が盗まれる。犯人の目的は何か?有名すぎる絵画は転売が不可能。となると、動機はいくつかのパターンしかない。
1990年ガードナー美術館の犯人像として、コロンビア人説、IRA説などの他に、日本人コレクターが裏にいるのではないか?と疑われていたことを初めて知った。80年代当時は欧米美術品を買いあさる日本人(ゴッホのひまわりを史上最高額で落札など)に反感の目が向いていた。
コモンローの米国に対してローマ法の日本は盗品購入者に甘いと言える。さらに、盗品リストをチェックする体制が甘いということでも白い目で見られていた。
闇のコレクターが自身の城や地下室ギャラリーに飾るために盗むというケースは小説や映画で見られる。「007 / ドクター・ノオ」のような美術絵画蒐集家という人は現実問題そうはいない。
盗難絵画を返却するために身代金を要求するケースがある。市場価格の10分の1が相場?駅などの手荷物預け所に返却されるケースが多いらしい。
政治的要求が動機の事件として1961年のゴヤ「ウェリントン公爵」がロンドン・ナショナルギャラリーから盗まれた事件がある。犯人はBBC受信料が払えなくて15日間収監されたことを怨む61歳の年金生活者だった。
筋金入り悪党たちとFBI、刑期を短縮するための交渉と駆け引き。どれもまるで映画やドラマ。
日本では欧州大陸、英国でのレンブラントやフェルメール、イタリア・ルネサンス絵画の盗難事件とその顛末はほとんどあまりニュースとして紹介されていない。この本に書かれた事件の数々は知らないものばかりで驚いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿