2022年11月14日月曜日

ルーネル・ヨンソン「小さなバイキング ビッケ」(1963)

ルーネル・ヨンソン作、エーヴェット・カールソン絵の「小さなバイキング ビッケ」(1963)を石渡利康訳(スウェーデン語初版からの翻訳)の2011年評論社版で読む。この児童向け作品に自分は初めて触れる。
ルーネル・ヨンソン(Runer Jonsson 1916-2006)スウェーデン・ニーブロに生れた児童文学作家。

「小さなバイキング ビッケ」は1974年に日独共同してテレビアニメが制作。これは日本でも放送された。おそらく50代以上の日本人にとっても懐かしいに違いない。(ちなみに「小さなバイキング ビッケ」は数年前にセンター試験「地理」でも出題され、受験生を大混乱させた。)

バイキングとは9世紀~11世紀にバルト海沿岸、西ヨーロッパ沿岸で船団を組み、海岸の集落都市(河を遡航し内陸都市も)を私掠目的に襲撃した民族集団。ロシアに国を建国したり、英国王室にその血を残す。
ときに殺戮、放火、誘拐。イングランドの人々は村を荒らしまくるバイキングに銀貨を払って帰ってもらうようなことをしてた。(それって倭寇と同じでは?倭寇のこどもアニメとか、ありえるのか?)
だが、一部は交易と漁業、また農業もしていたらしい。そんなバイキングのこどもビッケが大人には考えもつかない知恵とアイデアで活躍する痛快な物語。

ビッケが狼に追いかけられている場面からスタート。事前に細工しておいたよじ登るための木にたどり着くと、事前に準備しておいた石を投げて狼を気絶させる。
ビッケはフラーケ地方という場所に住んでいるらしい。父はハルバルという名の族長で大男。アースガルドの神々に牡牛を捧げる「いけにえの儀式」を行う。隻眼で片耳もない。そのかわりに相手の鼻を落としてやったことを自慢する。キリスト教化以前の未開社会なのでいろいろ怖いことを言う。

母はイルバは息子ビッケの頭の良さを買っている。頭を使わない夫をたしなめる。そしてビッケと父ハルバルのネックレスを賭けた石運び競争。ビッケの知恵の戦い。

ビッケの部族はやっぱり沿岸を荒らしてた。立派な建物がある集落を襲撃してみたら建物じゃなくて書割り板塀で落とし穴。全員が奴隷にされる…というときにビッケの知略。集落の首領も感心。しかし、ノコギリエイで丸太が切れるのか?

やっぱり野蛮人のバイキングたちなので人を殺す話も出てくる。歯が痛いとうめく仲間がうるさいからってだけで殺そうとするなよ。

ビッケ以外は全員バカという中世以前の昔話風児童文学。フランク人の城に略奪に出向いて捕らえられた父を救出するだとか、デンマークの海峡税を脱税する話だとか、これが本当にバイキングに伝わる話だったら興味深い。

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