2022年10月24日月曜日

樋口有介「魔女」(2001)

樋口有介「魔女」(2001)を読む。初出は2001年に文藝春秋より出た単行本。2004年に文春文庫化。2018年に改稿出版された創元推理文庫で読む。

これも3回目ワクチン打ちに行ったついでにBOで110円購入したなかの一冊。90年代、2000年代のミステリーは表紙を人気イラストレーターに任せればもっと売れる可能性がある。キレイなイラストなら人々の目に留まる。

この本の主人公広也は大学卒業後に定職についていない23歳就職浪人。洗足池の近くの南千束で母と姉と暮らしてる。(父はアフリカに行っている)
ガーデニングの専門家で5歳年上の現彼女美波の仕事をたまに手伝う。美波にはつき合ってる男性もいるのに川崎の部屋に泊まればセッ○スする関係。(どうやら樋口有介は村上春樹の影響を受けてるに違いない。やたら料理とセッ○スの実況中継が多い。)

広也の姉水穂は野心的女子アナでニュースキャスターを狙ってる。新宿区落合のアパート火災で女性が死亡した事件でスクープを狙い、弟広也に聞き込み調査バイトをさせる。広也は被害者女性千秋(23)と大学時代に2,3か月交際していた関係。水穂と美波は友人関係。

あの美人だった元恋人千秋が生きながらに焼かれ殺された理由は何か?
千秋がソーシャルワーカーとして働いていた病院の同僚や、千秋の現在の彼氏だった大手化粧品会社課長尾崎、千秋の行徳の実家を訪ねて話を聴く。
この主人公がとても23歳とは思えない。まるで40代ベテラン探偵みたいに見ず知らずの相手とアポなしで会って話を聴きだす。いつもの樋口有介ハードボイルド青春ミステリー文体。

美人で優等生だった千秋を調べるにつれ裏の顔が見えてきて困惑。ソーシャルワーカーでありながら冷酷な性格。
妹みかん(父が異なる)に言わせると「魔女」。妹は姉を憎んでいた。部屋には魔術関連書籍や呪いに使う道具などが大量に残されていた。

千秋の母の再婚相手(行徳の素封家)は夜釣りで堤防から落ちて溺死していた過去が。さらに千秋の高校時代の友人(男子)も自殺(溺死)していた?!千秋が魔術で殺したのか?!
そして事件後に容疑者に浮上し逃亡していた尾崎が河口湖で溺死体となって発見。千秋殺害の犯人としてほぼ確定。だが、失踪後の足取りがつかめない。

千秋はもしかして多重人格?ひょっとすると継父から虐待を受けていた?
「千秋の尻に痣があった」ことを思い出す。あれはタバコを押し当てた跡では?そのことに気づくのが現彼女美波とセッ○スしてる最中w なんだこの主人公。

千秋の妹みかん(16歳不良)が今回のヒロインか?学校にも行っておらず難しい性格。タバコも吸う。
この子と一緒に山形まで出かけたり、家で騒動を起こしたり。結果、主人公と恋に発展。(待て、16歳だろ)

そして最後の最後、エピローグで広也は真犯人と対決。樋口有介作品の主人公は真相を語るけど警察には知らせないというパターンが多い。だがいつもと違って今回は証拠も押さえ警察に提出してた。

「魔女」はいつもの樋口スタイル。期待したものが期待した通りに出てくる。ハードボイルド探偵主人公青年と美女たちの洒脱な会話とやりとり。
樋口有介はどれを読んでも雰囲気がほぼ同じ。巻末のあとがきで樋口はデビュー後に書いても書いても本が売れず、危機感から文体を変えたことも語っている。
なぜ樋口有介は東野圭吾のようになれなかったのか。

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