2022年10月26日水曜日

東野圭吾「回廊亭殺人事件」(1991)

東野圭吾「回廊亭殺人事件」を読む。1994年光文社文庫版で読む。1991年7月の光文社カッパノベルズ「回廊亭の殺人」を改題したもの。
自分、それほど東野圭吾を読んでいない。近年のものよりも、人気作家になる以前の才気あふれる初期のミステリー作品を読みたい。

社長秘書だった女性が、自分と恋人を心中に見せかけて殺して放火した犯人を捜すために、病院を抜け出し自殺を偽装。そして、社長と相談相手だった親友の老未亡人に変装し、一族が集まる社長の49日の遺言状公開にあわせて潜入捜査する。

序盤は登場人物それぞれの説明書きを慎重に読まないといけないので時間がかかる。
女性としての魅力に乏しいらしいヒロイン桐生枝梨子32歳は老未亡人本間菊枝になりすまして、財界人一ケ原高顕が建てた山奥の旅館「回廊亭」へ、招待客としてしれっと潜入。
ミスマープルのごとく一族関係者たちにそれとなく話を聴いたりする。女は復讐心に燃えている。

だが、32歳の女が70歳に変装してるのに誰も気づかないものだろうか?ヘアメークと演技力でなんとかなったとして、とっさの動きとかでいつかバレないかひやひやする。その点、一族の人々が鈍くて助かる。

菊枝は一族の前で、有能社長秘書だった桐生枝梨子からの遺言の手紙を持参したことを発表して人々を観察。(本当はそんなものないのに)
菊枝は部屋で寝ているのだがそれは罠。何者かが懐中電灯持ってドアから部屋に侵入。その様子をビデオカメラで隠し撮り。映像から高顕の亡き弟の娘由香と判明。こいつを縛りあげ吐かせようと由香の部屋に(社長秘書として以前に持ったままになっていたマスターキーで)侵入。由香の首を絞めようとしたのだが、由香はすでに刺殺されていた!

ロシア語アルファベット「И」のような血文字ダイイングメッセージを自分だけ読み取って消しておく。ドア向こうの廊下に人の気配がしたので、縁側ガラス戸から裸足で逃げる。(掲載されている見取図だと由香の部屋が庭に面していない。これは間違いでは?)
このとき、池のくびれ部を飛び越えたときに足跡を残してしまう。

ずっと菊枝に変装した枝梨子主観。一族の人々の会話と枝梨子の心の声。
殺された由香の母親はヒステリックに泣きわめく。このへん、犬神家の一族っぽい。
捜査に来た刑事が事情聴取するも菊枝の変装老けメイクを見抜けない。だが、菊枝は茶道の先生なのに枝梨子は茶道知識皆無で焦る。

殺された枝梨子の恋人の名前がなんでジローとカタカナ表記なんだ?とかいろいろと違和感を感じながら読んでいた。ひょっとすると何か叙述トリックがあるのか?とも頭をよぎったのだが、そのへんはあまり気にせずサクサクと読み進める。違和感を感じてもページを戻ったりしない。それがこの作家の本の正しい読み方。

ヒロインは自分を殺そうとした犯人に目星をつけた様子。で、犯人をおびきだして大浴場で殺害。このへんの展開はホラー。
警察が自分のことに気づく前に、さらにもう一人を殺して復讐を完成させないといけない…。

ラストで煙の向こうから現れた真犯人がまさにどんでん返しと衝撃の真相でびっくりした。ああ、そういう叙述トリックか!やられた。衝撃!グゲェと声が出た!騙されたw 
回廊亭の見取り図と記述のイメージが合わないことに気をとられていて、そっちにまったく気づけなかったw
そしてビターな最悪バッドエンド。

こういう作品をコンスタントに出していれば東野圭吾が国民的人気作家へと成長できたのも納得。
自分としては面白かった。もっと早く読めばよかった!オススメする。

「回廊亭殺人事件」は2011年に常盤貴子主演でドラマ化されているけど、アイツの件はいったいどうやって映像化したんだろうか?
叙述トリック作品を映像化するときは、あれとあれがピタッと一致したときの衝撃を感じられないと成功したとは言えない。自分ならこう撮るというプランは思い浮かぶけど、この作品は安易に映像化してはいけない気がする。

と思って調べてみたら、老人に変装は無理があるということで、美人に生まれ変わったことに設定変更。アイツもクライマックスで突然登場。ま、このほうが常識的な変更。
さらに今年、中国でもドラマ化。日本人の名前問題って中国ではどうしたんだろうか?てか、外国語に翻訳するの難しいんじゃなかろうか。

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