「ミシシッピー・バーニング Mississippi Burning」(1988 MGM)を見る。
1964年に米ミシシッピ州フィラデルフィア(ペンシルベニアではない)で公民権運動家3人が殺害された事件をモデルにした社会派刑事ドラマ映画。アメリカ史のお勉強のために見ておく。
アラン・パーカー監督は2020年7月に亡くなってる。主演のジーン・ハックマンは今年92歳でまだ存命中!
ミシシッピ州はあまり日本人になじみがない州。禁酒法を廃止したのが全米で最後の1966年。
奴隷制度を廃止した合衆国憲法修正第13条(1865)を批准したのも1995年で最後。
南軍旗モチーフの州旗を2020年になって廃止。
今年7月には「中絶は女性の権利」合憲判断を連邦最高裁がを覆したことで州内唯一の中絶を受け入れていた病院を閉鎖。
以上から、ザ・南部という恐ろしい州。
冒頭で白人専用の水飲み場と黒人(有色人種)専用水飲み場、炎上する家。そして不穏な深夜のあおり運転。警察官が黒人と一緒にいただけでユダヤ人を殺すの?!
ミシシッピ州フィラデルフィアで3人の公民権活動家が行方不明となる(とされている)。それを調査するためにFBI捜査官2人、ウォード(ウィレム・デフォー)とアンダーソン(ジーン・ハックマン)がやってくる。中年刑事アンダーソンがやたら陽気なたたき上げ。ウォードは不気味冷静堅物エリート。
この町ではまだ人種差別が公然と行われている。街の食堂で刑事が黒人席に近づくだけでシーンと静まる。視線が集まる。黒人に話しかけることすら許されない。そんなことをするのはアカか北部やつら。(1964年というと東京オリンピックイヤー。あの大会の選手入場行進を見ると、現在のアメリカからは想像できないぐらいに黒人選手がいない。)
捜査を開始した二人に対し町ぐるみの嫌がらせ。まるで「TRICK」に出てくる田舎村。いたるところ南軍旗。嫌がらせの度が過ぎている。警察自体がKKKヤクザ。
沼で失踪した3人の乗っていた車が見つかる。なぜにスーツ姿で沼地に?
軍隊でもいいから100人応援を呼べ!「よせ、戦争になる」「今始まった戦争じゃない」アメリカはずっと分断してた。
刑事が泊ってるモーテルから追い出されそうになるが、ウォードは「モーテルを買い取れ!」そうだ、それぐらい本気で捜査しろ。池の水ぜんぶ抜け!
FBIに誰も敬意を払わない。町の住民自体が「よそ者は余計なことするな」と非協力的。「キング牧師ってのは共産主義者なんだろ」
付け火野郎たちが自由すぎ。この町の判事も狂ってる。これを正義だと思ってやってるから恐ろしい。限りのない憎悪。どれほど放火殺人を繰り返させても法で裁けない。合衆国治外法権。今も戦争中。
この映画、とにかく南部の白人を徹底的に不気味に描いている。顔つきが異常なように撮ってる。たぶんそれは正しい。
ウォードもアンダーソンも無能野郎で見ていてイライラする。FBIも無能。なんでやつらを罠にかけて証拠を得るとかできないの?
と思ってたらやっとひとりずつ死ぬほどビビらせて吐かせるとか、盗聴とか誘導とか、掟破りの逆KKKとか、強引な必殺仕事人捜査始めやがった。
ラストでのペル保安官補の妻へのジーン・ハックマンの意味不明で空虚なスマイルが怖い。
アメリカってこんなに酷い国なんですよという映画。この映画を見るとケネディ暗殺事件がさらに闇に見える。
この映画と違って当時のFBIは黒人が殺されたぐらいでは捜査に乗り出さなかったらしい。
KKKがのさばってても見て見ないふり。人権をないがしろにしてる側が人権を盾にする滑稽さ。旧統一教会をかばう政治家や文化庁の姿がかぶった。
けど、アメリカのジャーナリズムは騒いだ。東西冷戦中のアメリカは自由と民主主義のすばらしさを世界に喧伝するには道徳的にもソ連を上回る必要があった。
そういえばアメリカ横断ウルトラクイズってミシシッピとかアラバマとか行ってなかった気がする。デトロイトとかクリーヴランドとかピッツバーグとか自動車産業工業都市もほとんどない。反日感情高くて行けなかったのかもしれない。
日本人はアメリカを知るとアメリカに憧れることはなくなった。せいぜいロスとかニューヨークしか知らない。アメリカ人のほんとうの姿は知らない。
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