2022年10月17日月曜日

岩波新書1772 シリーズ アメリカ合衆国史③「20世紀アメリカの夢」(2019)

岩波新書1772 シリーズ アメリカ合衆国史③「20世紀アメリカの夢」中野耕太郎(2019)を読む。著者は大阪大大学院教授でアメリカ近現代史の専門家らしい。
この本では主に民主主義アメリカの貧困と不平等との戦いの歴史を、1973年にニクソンが退くまでを扱う。

1901年の段階でアメリカはGNP200億ドルを超える世界一の工業国。で、世界のどの国よりも大きなスケールの格差と貧困が問題化。アメリカの帝国主義は世界中から批判される酷いものだったけど、国内では社会正義のために運動を起こす人々が現れる。そこはソ連と違う。どちらがマシか?まあアメリカだろう。

ウィルソン大統領は元プリンストン大学長で教養があって高潔なイメージ。だが、南部民主党から選出されている。人種隔離とクークラックスクラン騎士道を信奉。その時点で人種と平等においてアメリカは後退。黒人たちは白人専用の劇場に入れないし路面電車も人種で分けられる。

ウィルソンって日本史にとっても重要で存在感のある大統領だけど、この本を読むとあまり尊敬できない。前時代の人権意識しかない。
アメリカは第一次大戦のときから軍国主義で国粋主義。反戦演説やビラでも逮捕有罪。徴兵制は憲法修正13条のいうところの「苦役」では?に対して連邦最高裁は「奉仕は苦役ではない」というロジックで合憲化。(これは現在においても日本国憲法第18条と徴兵制の論拠にする人もいる)

アメリカは先住民やプエルトリコを統治はするが市民権を与えていなかったのだが、徴兵をエサに市民権を付与するようになる。フィリピンもアメリカ市民でなかったのに民兵を動員していく。

世界大恐慌とニューディールの項を読むと、反対論が強くとも民主党はやれることのほとんどをやっていたんだなと感じた。
失業中の青年未婚者にも仕事を与えるプログラムには感心。(今の日本は格差と貧困の解消にまったく冷淡。結果、急激な人口減少へと突入。)
アメリカは大戦中から好景気に転じてた。

「20世紀アメリカの夢」とは貧困と不平等をなくすこと。酷いなと感じる反動もあったけど、総じて奮闘するアメリカ社会の偉大さも感じた。

アメリカが民主的な福祉国家形成をめざすきっかけは冷戦から。ソ連にイデオロギー的優位に立つためには人種差別の廃絶が必要。外的圧力が国内政治に作用した。
ニクソン時代のアファーマティブアクション「バス通学」について、自分はこの本を読むまで何も知らなかった。

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