2022年9月3日土曜日

ジョーン・G・ロビンソン「思い出のマーニー」(1967)

ジョーン・G・ロビンソン「思い出のマーニー」(1967)を初めて読む。
この本は2014年にジブリによって長編アニメ映画にもなっているのだがまだ未視聴。
いろいろな版があるのだか今回は越前敏弥・ないとうふみこ訳2014年角川つばさ文庫版で読む。戸部淑イラストがいまどき美少女感がしてよい。こどもがその本を手に取るかはキャラがアニメっぽいほうが有利かもしれない。
WHEN MARNIE WAS THERE by Joan G. Robinson 1967
ジョーン・G・ロビンソン(1910-1988)はバッキンガムシャーで弁護士の両親に生れた児童文学作家。(母親は史上初めてケンブリッジ大学に入学を許された女子学生のひとり。)
画家リチャード・G・ロビンソンと結婚後、ロビンソン一家は毎年夏にノーフォーク州バーナム・オーバリー・ステイスという田舎町で過ごしていた。このまちが本書の舞台らしい。今はすぐにグーグルで風景を見れて便利。

アンナは両親を亡くし面倒を見ていた祖母も亡くなり、ロンドン・エルムウッドテラスのミセス・プレストンの元で暮らす。それほど困窮するわけでもなくわりと普通以上の暮らし。ちゃんと愛情を受けて心配もされ不自由のない暮らしのようだが、大人の顔色には敏感。自分というものを持たないし、何かを自分からやろうとしない。周囲と壁を作って内面を見せない。

そこでミセス・プレストンはアンナを昔なじみのスーザン(ペグ夫妻)の住むノーフォークの海岸まちリトル・オーバートンへしばらく預けることに。
で、ペグおばさんも普通のこどもらしさのないアンナを心配。ペグおばさんと仲のいいスタッブズさんの娘サンドラとはまったく気があわずに意地悪される。
誰からも愛されないと感じる孤独少女の心の声と内面独白が続く。

やがて入江の向こうにある屋敷に住む金髪碧眼にドレス姿の美少女マーニーと知り合う。
この子も孤独。だが、出会ってすぐにふたりは気が合う。小舟で行き来し、お互いに特別な存在であることを名乗り合う。夜になると浜辺や小舟で遊ぶ。英国の沿岸にはシーラベンダーという青い花が咲くことをこの本で初めて知った。
夜中の大人のパーティーにも変装して参加。だが、ふたりが仲良しなことはふたりだけの絶対の秘密。いったいなぜ?

入江の近くに水車小屋があるのだが、そこをマーニーは嫌う。だがある夜、マーニーはなぜかその小屋でひとり震えている。マーニーを発見したアンナはそばで励まし一緒に過ごすのだが目を覚ましたらマーニーはいない。なんで?親友の裏切り?もう顔を見たくもない。

だが嵐の夜、屋敷の窓からマーニーは必死に訴えるようにアンナに呼びかける。その姿を見ただけでアンナはすべてを許す。しかし、アンナは水辺で溺れかけいるところを救出。以後寝込む。目をさますとマーニーは消えていた。そもそもその”湿地屋敷”に家族なんて住んでいなかった?!なにこのサスペンス展開?

物語後半になると湿地屋敷に新しい住人リンジー一家がやってくる。男女5人のきょうだいがいる。アンナは追いかけ回され強引に仲良くなり、リンジー家に招待。やがて、空想大好き次女プリシラがアンナを勝手にマリアンナだと思っていたことが判明。それは、部屋から古い日記ノートを発見したからだった。
ここから一気に湿地屋敷とマーニー、そしてアンナの過去が明かされて行く。数奇な運命をつなぐ幻想ファンタジー。

感動のストーリー風ではあるのだが、アンナが一緒に遊んでいたマーニーとはいったいなんだったのか?英国伝統のH.ジェイムズ「ねじの回転」みたいなことか?
児童書は幼い少女の思考をゆっくりぐるぐるするので、大人が読むにはなかなかテンポがよくなくて展開にイライラもする。

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