樋口有介「うしろから歩いてくる微笑」(2019)を創元クライム・クラブ版で読む。
樋口有介は2021年10月に急死したので、柚木草平シリーズは今作がラスト。
自分、手に取ったものから読んでるので、第1作「彼女はたぶん魔法を使う」をまだ読んでいない。しかし、これまで順番バラバラで柚木草平シリーズを読んでとくに困ったことはない。
柚木はいつものように別居中の小学生娘とデート。自分、柚木シリーズがこれで3回目なのだが30年このパターンで年齢も38歳のまま主人公。
そして前回の事件で知り合った東急文化村の裏にあるビル所有者母娘の家で鍋などしていると、鎌倉在住の薬膳研究家・藤野真彩を紹介される。この人はアルバイト医師でもある。
10年前、高校の同級生が失踪した事件を調査してほしい。最近になって鎌倉周辺での目撃情報が増えている。失踪当時は駅周辺で「探してます」というビラも配ったが、事件が風化しそう。
柚木は鎌倉の「探す会」事務局を訪ねて聴き込み開始。
だがその夜、事務局で詳細を尋ねた女性(鎌倉タウン情報誌を編集発行)が何者かによって殺害される。
柚木草平シリーズはどれも毎回主人公中年男性ライターが、なぜか美女たちに構われて、楽しく会話したり酒のつまみを作ったりしながら事件の全体像がわかっていくスタイル。今回も地元警察署の刑事など美女が登場。
展開が遅い。とくに劇的な展開や、驚愕のトリックがあったりするわけでもない。むしろ2時間刑事ドラマとして普通にリアルな展開。樋口有介は警察内部の事情になぜこうも詳しい?
樋口有介には少なくないファンが今もいるのだが、読者のほとんどが「こういうのでいいんだよ」的なワンパターンの安心感を得ているのかもしれない。自分も読んでいて楽。
なかなか展開がなくてイライラもするのだが、サクサク読み進められる。話の本筋と関係なさそうな箇所は読み飛ばすこともできる。
残りページ数が少なくてなってもぜんぜん話の全体像が見えてこなかった。女子高生失踪の理由はそんなに驚くことでもないのだが、このボリュームの社会派ミステリーとして、最低限の驚きの真実ぐらいはある。
樋口有介柚木シリーズは軽妙な会話を盛り込んだ松本清張と言っていいかもしれない。
はたして「うしろから歩いてくる微笑」というタイトルが合っていたかどうか?タイトルを見ても読後に内容をまるで思い出せない。
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