2022年8月13日土曜日

中公新書2650「米中対立」(2021)

中公新書2650「米中対立 アメリカの戦略転換と分断される世界」佐橋亮(2021)を読む。

中ソ国境紛争後の中国はアメリカと接近。キッシンジャーはソ連を牽制するために中国と接近。
カーター政権、レーガン政権で国交を正常化。アメリカは政治体制の異なる中国に関与し始める。父ブッシュ政権では天安門事件のような人権無視虐殺も見て見ぬふり。中国の巨大市場は魅力だし。
グローバル化クリントン政権ではついに日本パッシングに至る。子ブッシュではテロと戦うための余力はない。中国と軋轢を起こす陳水扁の台湾と関係が冷え込む。

この本は前半まるまるアメリカの中国への期待がしぼんでいく過程を順序だてて説明。トランプ政権で米中関係がいきなり悪化したわけではない。クリントンも子ブッシュも選挙運動期間中は中国に辛辣。だが政権に座ると現実的になり対中国にはまろやか。

だが、オバマは逆。政権末期になると「関与を続ければ政治体制、人権、市場、国際社会での責任ある行動をとるようになるはず」という中国への期待はほぼなくなる。
中国はアメリカからの不満に対して目先の利益をちらつかせる短期的な懐柔策しかとらない。アメリカが育てた中国はすでに手に負えない怪物。脅威。

そしてトランプ政権では貿易戦争。ファーウェイ他への規制、報復に次ぐ報復の関税。アメリカは台湾との関係を大胆に変えていく。議会も財界も反中国へ針が振れる。

不公正な貿易慣行、為替操作、市場介入、自国に都合のいい国際ルールのみのつまみ食い、軍事費の増大、ウイグル、チベット、香港、一帯一路、海洋進出、技術の窃取、習近平の終身国家主席化、宗教弾圧、やりたい放題の結果、気づいたら米国内での好感度だだ下がり。アメリカは中国にどんどん辛辣。なのに中国は逆にキレ散らかしてく。

まあここまでは10年ぐらいちゃんと新聞を読んでいれば知ってることばかり。なにか新鮮な知識が得られたわけでもない。これまでの米中対立史の整理。

中国とのかかわりの深い業界にいる友人は「米中対決はプロレスのようなもの。フリしてるだけ。」「アメリカは中国との結びつきを本気で切るはずはない」とよく言うけど、この本を読むとその認識はかなり甘いようだ。
で、今後アメリカはどれだけ本気で中国封じ込めをやるつもりか?

中国の覇権主義は「トゥキディデスの罠」(覇権国家と新興国の戦争)、「キンドルバーガーの罠」(この言葉知らんかった。二つの覇権国家のはざまで起こる金融世界の不安定)。グローバル化への悪影響。

実際は中国進出したアメリカ企業の9割は利益になってる。撤退を考えていないらしい。となると、安全保障と経済は別というやりかたでいく。
AEAN各国も米中どちらかに与したくない。封じ込めに加わりたくない。中国と関係の深い中欧東欧、ギリシャ、セルビアもそれほど中国から利益を得ていない。そこが東西冷戦と違うとこ。

結局、今後も中国の増長は止まらないようだ。

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