文春新書1320「ラストエンペラー習近平」エドワード・ルトワック著 奥山真司訳(2021)を読む。著者はルーマニア出身で米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問という人物。
欧州では2020年末の中国との投資協定が2021年5月に欧州議会で否決され、半年の間に日本のステータスが上がったという。
それは中国の外交戦略の根本的失敗のせいだと著者は語る。それはつまり自国内では自由化民主化を退化させた「皇帝」習近平の全方位強硬路線「戦狼外交」のせい。
中国の意思決定はたったひとりの頭の中で成される。一度欧米から嫌悪の目で見られた人物が名誉を回復するのは難しい。
巨額の財政出動でいちはやくリーマンショックから立ち直った中国はカン違いをしてしまった。「このままいくと10年で経済力で世界一になれる!」と。
だが、経済力がそのまま国力にはならない。日本はかつて世界第2位の経済力があったのだが、「国力」が世界第2位だったことはない。だが中国は金の力で小国はなんでもいうことを聞きかせられると思ってしまった。
で、登場したのが「九段線」。これは蒋介石国民党の「願望」にすぎないものだった。結果周辺国は反発。反中包囲網となっていく。
楊潔篪「中国は大国だ。あなたがたは小国だ。」中国国内でしか通用しない論理を外交で吐く。
思わぬ反発をくらった中国は日本やインドを避けて弱そうな国を狙う。だがここでも間違った。もともと中国系が多く反米だったフィリピンと領土問題を発生させ敵にしてしまった。実力の伴わないヤツが相手かまわずイキり回ってる。何目的?
そしてコロナ。習近平は大国の指導者らしくない不安定な言動。スウェーデン、インド、ベトナム、オーストラリアとも関係悪化。戦略上、最も愚かなことは周囲のすべてを敵にすること。
そして香港国家安全維持法と海警法。中国は国内の法律を世界に適用させる。世界、どんびき。結果、世界規模の反中国包囲網。
人権意識の高い欧州各国の中国への反発が思っていた以上にえぐい。
中国はアメリカが共和党トランプ政権から民主党バイデン政権に変われば対決姿勢を弱めるはずだと思っていた。それもカン違い。対中国対決姿勢は党派を超えた国家戦略。
この著者は日本の安倍首相を高く買ってる。中国への最適な対処はNOを突きつけること。小さいものは大きなものに従うのが当たり前という思想を持つ中国は安部に戸惑う。だから安倍は中国からも韓国からも北朝鮮からも蛇蝎のごとく嫌われた。これこそが小国のとれる方法。対決はアメリカに任せて置けw
習近平は世界的IT企業のトップですらも、皇帝である自分よりも下にあることをはっきりさせる。どうしてこういう人格になってしまったのか?それは少年時代に家族が味わった文革の酷い経験。酷い目にあったからこそかえって毛沢東を妄信。自分もそうなりたいと願った?
著者は最新軍事テクノロジーも専門。もうすでに戦車や水上艦は役に立たない。的にしかならない?もう有人機の開発はやめろ?(それは2022年開戦のウクライナ戦争を見ると納得)
そして中国を倒すための楽しいアイデアの数々w
世界がこの世界を守るためにできること、それは習近平のメンツをことごとく潰すことw
この本、日本の読者に向けて語りかけるように書かれてる。内容がとてもわかりやすく平易。たぶん中高生でもすらすら読める。たぶん外交国防とも無縁なサラリーマンの通勤電車の読物。
ずっと「中国は大したことない」「恐るるに足りず」という楽観論調。日頃中国にムカついている人には爽快な本かもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿