2022年8月27日土曜日

中公新書2445「物語 ポーランドの歴史」

中公新書2445「物語 ポーランドの歴史 東欧の大国の苦難と再生」渡辺克義著 (2017)を読む。このような新書をどんどん読む。
東欧において存在感のある大国であっても、日本の世界史教科書にはポーランドリトアニア王国、ポーランド分割、第二次大戦、ワルシャワ条約機構、自主管理労組連帯…ぐらいしか記述はない。なのでこの本を手にとった。

今のポーランドのあたり(ヴァルタ川流域)に人が定住するようになったのが7世紀ごろ。ポラニェ族とヴィシラニェ族(9世紀にモラヴィア編入)。
このころ誕生した王権がピャスト朝という。記録に残る最初の王でキリスト教の洗礼を受けた人物がミェシュコ1世。すでに10世紀後半。

13世紀はタタールに国土を荒らされる。そして今度はドイツ騎士団との戦い。このころのポーランド王がカジミェシュ3世。ポーランド史において唯一「大王」と呼ばれる。ポーランドが「木の国から煉瓦の国へ」変化した。このころクラクフに大学が作られる。

大王が亡くなると王朝は断絶。一時的にハンガリー王ルドヴィグが王となり、次女ヤドヴィガがリトアニア大公国と結婚。ヴワディスラフ2世がカトリックの洗礼を受け王となる。1386年、ポーランド・リトアニア連合王国が誕生。これをヤギェウォ朝という。(自分は高校世界史でヤゲロー朝と習った)

15世紀になると重要議題は王、元老院、下院で話し合って決める民主制となる。16世紀初頭から18世紀の「分割」までポーランドはシュラフタ共和国とも呼ばれる。ドイツ騎士団との戦いは1525年に初代プロイセン公アルブレヒトがジグムント1世に臣従を誓ったことで終了。
1596年にジグムント3世はクラクフからワルシャワへ遷都。(日本でいうと秀吉が慶長の役をやってたころ。)

だが今度はスウェーデンとの戦争。ロシアとの戦争。オスマントルコとの戦争の時代。コサック(ボフダン・フメリニツキー)の叛乱などなど。
18世紀にザクセン選帝侯アウグストがアウグスト3世となる。以後、選挙王政。そして1772年にオーストリア・プロイセン・ロシアによる第一回ポーランド分割。以後、ポーランド人は祖国を失い果てしない独立への戦いを内外で繰り広げる。
このころアメリカ独立戦争にポーランドから独立の闘志コシチュシュコとプワスキが参加。ジョージア州プラスキ郡はプワスキの名前にちなんで名づけられた。

5月3日憲法を制定。選挙王政を廃止、王のリベルム・ヴェトの廃止。だが、ロシアが介入し第三回ポーランド分割(1795)。王は退位しポーランドは地図から消滅。
ナポレオン戦争でプロイセンが敗北するとフランス支配下のワルシャワ公国が誕生。オーストリアからかつての領土(クラクフ、ラドム、ルブリン、シェドルツェ)を奪還。
だがナポレオン敗北後はウィーン会議でロシア支配下のポーランド王国が誕生。1930年パリ七月革命が飛び火。蜂起は鎮圧。ロシアによる圧政。以後、ポーランド人は世界へと散らばる。

第一次大戦後にポーランドは復活。このときポーランド・ソヴィエト戦争。ボルシェビキ赤軍ロシア人の残虐行為が目立つ。

そして第二次大戦。ポーランドの敵はナチスドイツとスターリンソ連。ポーランドはなすすべなく4回目の分割。
以後、映画や文学でよく見る地下レジスタンスの歴史。蜂起すると鎮圧と報復。人類の歴史でもっとも過酷で悲惨な戦い。この本の半分以上が第二次大戦と独ソの狭間。多くのポーランド人が殺された。何か暗殺事件や強奪事件が起こるとゲシュタポは報復で収容所の囚人を大量に処刑する。酷すぎる。

この本を読んで「クチェラ暗殺事件」を初めて知った。国内軍総司令部が1944年2月1日にワルシャワのSS長官(在任中に大量処刑を実行)の乗った車を襲撃し殺害。(これは映画にもなっている有名な事件らしい)

亡命政府とソ連、シコルスキとアンデルス軍、ワルシャワ・ゲットー蜂起、などなどを押さえる。
多くの一般市民を巻き込み長期化し多くの犠牲者を出したワルシャワ蜂起の意味は今も論争。自分もまだよくわからない。軍事的に反ドイツであり政治的に反ソ反共。スターリンによるワルシャワ市民の見殺し。
ユダヤ人の収容所での虐殺を世界に伝えようとしたヤン・カルスキの存在をこの本で初めて知った。

ポーランド統一労働者党、ゴウムカ、スターリン批判、ポズナン暴動、ヤルゼルスキ、ワレサ、戒厳令、そんなポーランド現代史を駆け足で学ぶ。

この本でいちばん「お?!」って思ったのがポーランド人の姓は40万種以上もあること。そのパターン分析が面白い。
-ski/ckiという型が全体の35.6%でもっともポピュラー。シュラフタ(中小貴族)由来で地名由来のものが多い。
-akで終わるものは11.6%。〇〇の息子という意味合い。
-ik/ykで終わるものは7.3%。先祖の職業に由来。
-iczで終わるものは2.3%。人名から派生したもの。
ちなみに、ショパンはポーランド人の姓ではなくフランス人の父の名前。

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