主要キャストとしてマット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレックが出演。
「決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル」というノンフィクションを原作としているらしいのだが邦訳版は出ていないようだ。
最近ずっとイギリスやフランスの中世史に関する本をよく読んでいた。この時代はまったくちんぷんかんぷんだったのだが、やっと見る気が起こった。
1386年、狂王シャルル6世(ヴァロワ朝)時代のフランス・パリにおける最後の決闘裁判の顛末。(英国ではランカスター朝ヘンリー4世の時代。日本では足利義満が将軍の時代。中国は明で洪武帝の時代。)
この映画は冒頭からいきなり武具を身に着け騎馬上で槍で突きあう決闘シーン。衆人環視。14世紀にしてはやたら人が多い。これは市民にとっても娯楽だったのか?
で、三部形式での当事者それぞれ主観の回想が始まる。
まずは従騎士ジャン・ド・カルージュ主観で物語がスタート。
鎧武者たちの合戦シーン。こんな重たいもの着てたらたぶんぜんぜん動けない。
こうやって欧州は有史以来ずっと戦争。ずっと薄暗い世界。ずっと英語での会話。たまにフランス語がちらほら聴こえる。
ノルマンディーの従騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は戦地でマルグリット(ジョディ・カマー)と結婚。だが金はない。
土地の相続の件で国王に直訴するも却下。死亡した父の長官職を継ぐことができず母ともども困窮。
カルージュは騎士ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)と戦友。領主アランソン伯ピエール(ベン・アフレック)に訴える。カルージュは訴えが認められず宮廷から退けられ不満を溜める。ル・グリにも不満。
カルージュ夫妻は不遇の生活。1年後、友人に男児が生まれたパーティーに招待される。そこでル・グルと再会。過去は水に流して友情を再確認したように見えたのだが…。
カルージュはスコットランドの森の中の戦場へ。敵からの奇襲も生き延びてノルマンディーに帰還。だが風邪を引いてきたみたいだ。
戦いの報酬を受け取るためにパリへ。この時代のパリがうすら寒い寒村にしか見えない。カルージュは金貨300枚を受け取る。家に帰ると妻の様子がおかしい。
夫と義母が留守中に顔見知りの男がやってきて凌辱されたと告白。「そいつは誰だ?!」「ジャック・ル・グリ…」にわかには信じられない話に激しく戸惑う夫。報いを受けさせる!
カルージュは国王シャルル6世(アレックス・ロウザー)に決闘での決着を直訴。決闘はもう何年も前に禁じられている。だが、「ある種の上訴は有効」という規定がある。パリ高等法院司法官32人すべての列席があれば可能。
映画開始から40分以上経過。すると今度はル・グリ目線からの回想がスタート。また物語はなぞるように別目線で始める。
ピエール伯にカルージュの武功がなかったかのように讒言してたように描かれていたのが、実はル・グリがかばっていた?カルージュは単なる猪突猛進バカ?!
だが、ル・グリもピエールも酒の席での乱行がすぎるぞ。お互い好色で放蕩な性格で気が合う。
ピエールはル・グリに財政もまかせる。この時代は疫病で農民も多くが死んで地代が入ってこない。ル・グリの極悪非道な取り立てが始まる。娘マルグリットの結婚の持参金として渡すはずだった土地も奪う。マルグリットを凌辱したのも事実。やっぱりこいつは悪人。
口止めしておいてピエールの耳に入ると「嘘です!」と否定。いけしゃあしゃあと無罪を主張。
領主ピエール伯もル・グリに肩入れ。そうなると最終的手段。国王直訴。カルージュとル・グリは決闘裁判に臨む。
そしてまた40分後、今度はマルグリットの回想。カルージュとの結婚からスタート。受け取るはずだった土地の件で最初からカルージュは怒り心頭。
やはりマルグリットに比べたら軍人でしかないカルージュはバカで無神経。カルージュがスコットランド戦役にでかけてる間に一部ルールを変更して使用人、小作人たちを取り仕切る。
この時代は子どもができないのは名門にとって異常事態。騎士に男児が生まれないなどあってはならない。受胎できないのは交わりに嬉びと快楽を覚えないから?それは中世の人々にとっては常識なのかもしれない。
犯罪被害者が命を懸けて強姦を告発。リドリー・スコット版「羅生門」。中世フランスの残酷な女性問題映画。
まるで、「もしも決闘で決着をつける裁判があったら?」という、ドラえもん「もしもボックス」みたいな世界観だが、これは実際にあった話。真実を話すものは神の御加護があるはず。だから勝つはず。
恐ろしい発想。神を前にした恐ろしい野蛮。お馬さんが可哀想。
もしこの映画の視聴者が、クライマックスの決闘シーンで「殺せ!」と手に汗握るのもそれは怖ろしい。だが、ル・グリが殺されなかったら、もっと恐ろしい結末になっていた。
フランス国王シャルル6世夫妻の質感がとてもしっくりしてた。不健康そうな感じが中世の王族っぽかった。
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