2022年8月8日月曜日

シェイクスピア「リチャード三世」(1591)

シェイクスピア作「リチャード三世」を読む。1999年松岡和子訳ちくま文庫シェイクスピア全集7で読む。この戯曲は話が分かりやすく上演頻度が高いらしい。

英国人の誰もが知っていて、歴代英国国王で最も嫌われる人物がリチャード三世。
実の兄を殺し、殺した敵の妻を口説き、幼子を惨殺し、利用した臣下も使い捨て殺し、玉座についたリチャード三世の悪辣ぶりを描く。

ランカスター家とヨーク家の薔薇戦争が終わり、エドワード四世が即位したのが1461年。
王の末の弟がグロスター公リチャード。次兄のクラレンス公を讒言で幽閉し暗殺者を送り込んで始末。
仲間として支えてくれたヘイスティングズ卿を処刑。エドワード四世の幼い息子二人も幽閉。そして殺害。

この芝居はずっと罵り合い、暗殺者の会話、王妃たちの嘆き、国王の死に戸惑う市井の人々、罪なき幼い王子たちの会話、そして姿も醜ければ中身も醜いグロスター公リチャードの邪知暴虐の場面が続く。プランタジネット朝ヨーク家の血塗られた歴史絵巻。
日本でいうと室町後期。そろそろ応仁の乱が始まる時期にイングランドも内乱。日本史では王位簒奪のためにライバルを殺していくというと雄略天皇(5世紀?)ぐらいしかない。

ボズワースの戦い(1485)リッチモンド伯ヘンリー・テューダーに敗れる。死の間際の「馬を! 馬をよこせ! 代わりに我が王国をくれてやる!」という台詞は超有名。

リチャードに殺された人々が夢枕に立って呪詛するシーンは時代だなと思った。
プーチンもこんな感じで惨死してほしい。

国王の系譜は世界史学習では記号でしかないが、こうした物語として読めば歴史上の人物たちがいきいきとイメージできるようになってくる。
これまで読んできたシェイクスピアで「リチャード三世」が一番話がわかりやすく読みごたえがあったかもしれない。

ちなみに、ボズワースの戦いでリチャード三世を破ったリッチモンド伯ヘンリー(後のヘンリー七世)の母マーガレット・ボーフォートがヘンリーを産んだときの年齢は13歳(夫エドマンド・テューダーは26歳?)と知ってビビった。

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