「いのちの停車場」(2021 東映)を見る。監督は成島出、脚本は平松恵美子。原作は南杏子による同名長編小説(幻冬舎)。
岡田裕介やら木下グループや電通やテレビ朝日や新聞マスコミメディア各社が制作にたずさわった吉永小百合主演の大型企画。自分、吉永小百合映画を吉永さんがアイドル女優だった時代のものしかまだ見たことない。
ビジュアルを見ると「感涙のヒューマン医療巨編」とある。現実をリアルにわかりやすく描いて人間の優しさを感動的に描くスタイル。それ、自分はぜんぜん見たくないジャンル。
なぜ見るのか?広瀬すずが出てるから。いちおう見ないわけにはいかない。こういう映画に出るのも女優として大きく成長していく過程で出ないわけにはいかない。
撮影開始時期はコロナで世界中がそれどころでない大変な状態だった。それでも映画人たちは立ち止まるわけにはいかなかった。(なのに伊勢谷は公開直前に覚せい剤で逮捕。日本映画界の偉い人に迷惑をかけたのでもう復帰は難しいかもしれない)
いきなりトンネル内あおり運転の不穏なシーン。そして多くの人々が巻き込まれるトンネル内火災事故。
その後、62歳女性医師吉永小百合救急医が瀕死の全身やけど重症患者を淡々とテンション低く次々と指示していく。こういうシーンってやたら大声で怒鳴ったりヒステリックに描く映画やドラマが多いのでかえって新鮮。
そこに松坂桃李が交通事故に遭った女児を抱きかかえてやってくる。
さらに別の患者が心停止で吉永が呼ばれる。
見るに見かねた松坂が医師でもないのに点滴針を刺したということで病院の偉い人々が深刻に会議。ああ、医師法を修羅場で厳格に適用する意味って?
吉永医師が責任とって大病院の救急医を辞める。故郷(金沢)で訪問在宅医療へと転身。
すずは初登場シーンからすず。すず独特の節のあるいつもの台詞回し。
吉永よりも訪問医療のベテラン。ゴミ屋敷も窓から侵入するとか逞しい。
病人老婦人の老夫(泉谷しげる)の品のなさ。医師ってエリートなのにこういう人と接しないといけない。吉永医師は戸惑いっぱなし。医師としての仕事以外で疲れ切る。
さらに松坂が前の病院を辞めて吉永を追いかけてくる。車(赤いベンツ)を持っているというだけで採用w これで坂道だらけの町を車で送迎できる!w 最初の仕事がゴミ屋敷清掃。
松坂は医大卒なのに3回医師国家試験に落ちている事務員?そんな人がいるのか?松坂は勉強してる形跡がない。自分が医者に向いていないと思ってるらしい。卒業から何年経っても国家試験って受験できるのか。それ専用の予備校があるのか。
脊髄損傷IT社長伊勢谷の訪問在宅医面接?何を考えてるんだこいつは。何もかも希望をかなえてもらう医師を雇うならお前と同じぐらいの年収がかかるだろう。こんな社長の下で働きたいやつがいるのか?
次々現れる問題患者。石田ゆり子(プロ棋士)さんも全身に転移した末期がん患者なのか。
たまり場食堂シーンでモノマネ合戦になるとか、いったいなぜこんなシーンが?と感じる。どういうセンスの映画なんだ。
吉永医師の父親が田中泯。そんな高齢?家の前で転倒し大腿骨骨折。その年齢で骨折すると即寝たきりでは?
小児がん患者の子が「パパもママもがんばれって言うけど何をがんばれば?」とか重い。
末期がん患者(柳葉敏郎)の臨終の場面に偽息子松坂とか。悲劇と喜劇は表裏一体。
終末医療、老老介護、小児がん。安楽死。医療制度の問題を扱うヘビーにならざるをえない映画。みんな死ぬんだ…という絶望映画。
こういうの誰が見ても得をしない苦役映画だが、映画が時代を映す芸術文化である以上は誰かが作らないといけない映画ではある。
広瀬すずの出演シーンは多い。後半はわりと重要な役回り。
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