2022年8月15日月曜日

ローランド・エメリッヒ「ミッドウェイ」(2019)

ローランド・エメリッヒ監督の「ミッドウェイ Midway」(2019)を見る。
日本での公開は2020年。配給はキノフィルムズ。脚本はウェズ・トゥック。日本にとって太平洋戦争が負けに転じた分水嶺。あまり見たくなるものでもないけど、歴史のお勉強も兼ねて見ておく。

映画は1937年東京清澄庭園から始まる。アメリカ海軍駐日武官レイトン少佐(パトリック・ウィルソン)は山本五十六(豊川悦司)から「日本を追い詰めるな」と警告される。「分別のある日本人もいるからチャンスをくれ」
(山本五十六は豊川悦司よりも國村隼のほうがイメージに合ってるだろ。)

ハワイの西にいる空母エンタープライズのベスト中隊長(エド・スクライン)は発着訓練中。日本と違ってガム噛みながら無駄口が多いのが米兵。あまり軍人らしくない連中。なんかカッコつけすぎだろ。
そして真珠湾の戦艦アリゾナの新兵たち。そこに日本海軍の機動部隊がとつぜん奇襲攻撃。みんな日本の逆ギレを予想してなくて呆然。(日本を追い詰めたアメリカも悪いんですよ。)
アリゾナのすぐそばで幼い少女が見物中。この子はレイトン少佐の娘?

ハルゼー提督は日本艦隊の追撃に向かうが空振り。若い米兵たちの戦死がテンポよく描かれる。
戦艦アリゾナに乗艦していたベストの親友も地獄のような惨状で部下を救おうと奮闘するも戦死する。遺体は黒焦げ。

山本はまるで飛騨高山みたいな雪国日本でルーズベルトのラジオ演説を聴いているw このへんはアメリカ側のイメージ。山本「眠れる巨人を起こしてしまった…」とつぶやく。
山本は山口多聞少将浅野忠信)に南雲忠一中将(國村隼)が真珠湾の燃料タンクを破壊しなかった不満を述べる。
陸軍との会議から戻る車の風景がまるでヨーロッパの森のよう。まるで日本らしくない。
一方そのころハワイではアメリカ野郎らしい仲間を失った愁嘆場。

新任の太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ(ウディ・ハレルソン)は、日本軍の攻撃を防げなかった責任を感じるレイトンに引き続き情報分析を担当させる。「山本の考えを読み次の行動を予測しろ!」

ハルゼー提督のエンタープライズはマーシャル諸島を攻撃。ベスト隊は飛行場を破壊する。日本兵がキビキビしてなくて中国人にしか見えない。
真珠湾でアメリカは一丸となったが、日本は窮鼠。早くも爆撃機で自爆攻撃。機転を利かせて艦載機から機銃掃射して間一髪で艦の撃沈を防いだ機関士はすぐにその場で昇進。
反撃の準備をしないといけないのにハワイは将校クラブでダンスパーティー。まあ日本も偉い人は芸者と飲んでたわけだが。

空母ホーネットからドゥーリトル中佐(アーロン・エッカート)が一か八かの日本本土を報復空襲。食事中の昭和天皇も怯えながら慌てて防空壕。このシーンを見ただけでとてもB級感がする。

ドゥーリトルと中国人の邂逅。このシーンも中国資本の影響。国民党軍が隠れ住んでるんだから日本軍の人家空襲も当然なのにさも酷いことのように描くな!と思ったのだが、アメリカ人はドゥーリトル隊の攻撃への報復だとわかっている様子。

レイトン暗号解読班のロシュフォート中佐(ブレナン・ブラウン)が日本海軍の攻撃目標はミッドウェー島だと断言。ニミッツたちはなかなか情報の価値をわかろうとしない。信用しない。
だが、アメリカ軍が太平洋を奪い返したのはこういった優秀な情報将校たちのおかげ。日本にはその価値観がなかった。

珊瑚海海戦で損傷した空母ヨークタウンを突貫工事で修復。湿疹が酷いハルゼーを療養させ、スプルーアンス少将に第16任務部隊を任せ空母3隻をミッドウェーに配備。
空母から攻撃機を発着させるのは難しい。戦闘でないのに操縦士が無駄に死ぬ。

そして1942年6月4日。映画開始から1時間20分、やっとアメリカは日本艦隊を迎え撃つ。
南雲中将が敵を見下す。この人には空母と戦闘機をつかった海戦の経験も素質もなかった。魚雷切り替えタイミングに敵機に発見されるという不運もあった。
日本海軍の将校にも日本語イントネーションのおかしいアジア系俳優がいる。それがわかるのは日本人視聴者だけ。まあ、これもハリウッドなので。

日米双方が多大の犠牲。若い命を散らした結果、日本はヨークタウンを大破(そのシーンはあまりなかった)させたものの、アメリカは赤城、加賀、蒼龍の空母3艦を撃沈。さらに飛龍も航行不能で自ら沈没。
ミッドウェイ海戦は日本にも勝ち目はあったのだが情報の差で負けた。

ラストのベスト隊長の帰還は都合よすぎないか?だが、米国の苦戦ぶりと薄氷の勝利が、日本にリスペクトしつつ、感動的(アメリカ人にとって)に描かれた映画。
ミリタリー戦術オタの評価は知らないしわかりようがない。CGにリアルを感じた人もいるようだが、自分はトラトラトラのほうがリアルを感じた。
日本側の主役は山口多聞だった。敗軍の将が艦と一緒に沈むという伝統はバカの極み。経験のある人材を次に活かせ。

日本とアメリカはガチで空母同士の死闘をした唯一の二か国。その経験は双方で共有されているはず。双方にリスペクトがある。中国、ロシアにはそれがない。
だが次の時には、80年前の経験は活かせないかもしれない。きっと何か別の要素が戦況を変える。

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