2022年8月9日火曜日

シェイクスピア「ヘンリー六世」(1590)

引続きちくま文庫シェイクスピア全集19「ヘンリー六世 全三部」を読む。2009年松岡和子訳で読む。
ランカスター朝ヘンリー五世の死と、シャルル(後のシャルル七世)とオルレアンの乙女の登場からこの戯曲は始まる。
「リチャード三世」の前の時代。ちくま文庫「ヘンリー六世全三部」は「リチャード三世」より倍分厚い。ちくま文庫は注釈がセリフの下に書かれていて理解しやすい。

第一部はずっと英仏百年戦争終盤の一進一退。基本、英仏側それぞれの貴族たちの会話。占領した都市での会話。罵り合いなど。とくに戦況の様子などはわからない。ぜんぜんヘンリー六世は目立たない。

トールボット卿親子の戦死。オルレアンの乙女がヨーク公に捕らえられ火刑…という印象的な場面。そして、アンジュー公レニエの娘マーガレットがサフォーク伯に捕らえられ、イングランド王ヘンリー6世の王妃となるラストへ収束していく。

第二部、フランスとの和平によってヘンリーはマーガレット妃を得たのだが、パリは陥落。アンジューとメーヌを失った。イングランドの貴族たち、とくにグロスター公ハンフリーは王とサフォーク侯に不満たらたら。

グロスター公妃エリナーの王への批判の言葉から謀反の疑いによって、公は摂政を解かれ、妃はマン島へと流される。
そしてヨーク公による訴訟の裁き。この時代のイングランドでは正しい者には神がついているはずだから決闘で決着をつける。

グロスター公ハンフリーはサフォーク公の刺客によって暗殺。それを聴いた王は卒倒。そしてサフォーク公の死。そしてジャック・ケイドの叛乱。今度はアイルランドからヨーク公が戻ってきて王位を狙う。
セント・オールバンズの戦いでクリフォード卿父死亡、サマセット公も死亡、国王夫妻は逃げ惑う。…という場面で第二部終了。

第三部、国王はヨーク公リチャード・プランタジネットと王位の件で妥協。怒り狂ったクリフォード卿息子はヨーク公の幼い末子ラトランドを殺害。王子エドワードを廃嫡した弱気の国王に怒り狂った王妃軍によってヨーク公も殺害。

スコットランドに逃げるもさ迷い歩きエドワード王の臣下に捕らえられたヘンリー六世。王妃マーガレットと王子エドワードはフランス王シャルル十一世に助けを求める。新王エドワード四世の妃にボーナ姫をという使命を持ってやってきたウォリック伯は、エドワードがグレイ夫人を妃としたことを知って愚弄されたと激怒。ヨーク派からランカスター派へ転身。

ウォリックはオクスフォード伯とロンドンへ進軍。エドワードの弟クラレンス公ジョージの協力もあってエドワードは捕らえられ、そしてヘンリー王の復位。だが、エドワードは幽閉先から脱出。

エドワード四世とヘンリー王妃マーガレットとの最終決戦はエドワードの勝利。マーガレットの息子エドワードはクラレンス公ジョージに刺殺され、ロンドン塔のヘンリー六世はリチャードに刺殺される。リチャードは次はクラレンスの番だ!と独り言。
再び即位したエドワードもやがて息子たちに因果応報の予感を残して全三部終了。

そんな王家と貴族の殺し合い場面がずっとつづく歴史絵巻。イングランド王位をめぐって争い、ひたすら罵り合い。
教科書では王の名前が活字として順番に記載されるだけ。シェイクスピアで読むと人間ドラマとして活き活きしてイメージできる。それにしても登場人物が王家と貴族たちばかりなのに全員口が悪いw

できることなら「ヘンリー六世」を読んでから「リチャード三世」を読むべきだった。
それにしても松岡和子訳「ヘンリー六世」は決定版と呼んでいいほどの出来栄え。注釈も適宜わかりやすい。
また何か「薔薇戦争」をテーマにした本とか探して読みたい。

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