2022年7月2日土曜日

橋本環奈「ハルチカ」(2017)

橋本環奈出演作リストに「ハルチカ」(2017 角川)という映画があるので見てみる。主演は佐藤勝利と橋本環奈。ヤング向け小説文庫を映画化したもの。監督は市井昌秀。脚本は山浦雅大。

高校吹奏楽部の青春を描いたものらしい。吹奏楽ドラマ映画はたまになくはないが多くもない。
吹奏楽部は中学高校における文化系サークルにおける最大勢力。クラシック畑の人も学生時代は吹奏楽部に籍を置いていた人も多いし、POPミュージックにも吹奏楽部出身者が多い。女優で楽器ができる人も吹奏楽部出身者が多い。

大会に出場するにはそれなりの編成をそろえなければいけない。ちゃんとした指導者も必要。楽器が必要。手入れが必要。打楽器など大きな楽器の運搬には別途トラックも必要。
だが近年は部員を集めるのにどこの学校も苦戦してるらしい。今は昔と違って音楽が多様化してる。やりたい音楽を一人でやるスタイルが定着化。なにも吹奏楽課題曲のようなものを繰り返し反復練習して金銀銅といったグレードをつけることに価値を見出せない若者が増加。そんな現状を踏まえ、この映画を見る。

静岡市清水が舞台の映画らしい。桜の季節、高校新入学生の橋本環奈が制服姿で息を切らして走ってバスに乗り込む。この手の青春映画はたいていそんな始まり。この高校ロケ地が足利西高だ。
大事そうに胸に抱えているのはフルートケースだ。フルートはわりとヴァイオリンのようにピンキリで、高額な物ほど良い音がする。

開始数分を見ただけでまったく奇をてらわない普通の高校青春映画だ。
だが、朝のバスシーンがなんか嫌。ギュウギュウ詰め満車なんだから座ってる人だって揺れて接触したぐらいで不満そうにするはずはない。

放課後に吹奏楽部の練習場所へ期待に胸を膨らませて行ってみると、ブサイク同士が入部希望者に気づかずわりと長い時間キスしてるとか違和感。
え、この高校に吹奏楽部がない?!廃部が決定している?顧問が産休?!
校長先生の挨拶が故志賀廣太郎さんだ。この校長がまるで悪徳経営者のよう。教育者ならやる気のある生徒を見てむしろ喜ぶべきだろ。

4月中に部員を9人集めないといけないというミッションが課される。こういうの「ちはやふる」と同じような設定。

で、元部員を訪ねて声をかける。白石聖が出てるけどワンシーンのみ?なんか暗い。吹奏楽部に一体何があった?
もうひとりの主役佐藤勝利はホルン。なんだかヒロインがイッキに気が強い役に変貌。暴力をふるうな。
上白石萌歌は中学時代チューバの実力者?!(出番少ない)みんなから「もう吹奏楽はやるつもりはない」と断られる。
チューバは実社会では吹奏楽以外あんまり活躍の機会ない。ダブルベースのほうが社会に出てからも趣味として活動の機会がある。チューバは教育現場からなくしてもよい。

9人の部員を集めたところで本気の吹奏楽なんてできるのか?必死さが痛い。
え、ヒロインは中学時代元バレー部?それでいきなりフルートを買ってしまった?ド素人だけど熱血?ド素人なのにスコアを見ただけで「いい曲」とか言うのか?

チラシ配るよりも、校庭で楽器を楽しそうに吹いたほうが誰か興味をもってくれるんじゃないか。と思ってたら元部員もっさりデブが軽やかにトランペットを吹く。これが普通のレベルの高校生の演奏じゃない。
で、1楽器に1人ずつ部員。指導者もいない状態で上達できるのか?吹奏楽部よりも、東京スカパラダイスオーケストラとか器楽アンサンブルを目指すべきでは?ピアノやギターを募集してもいいだろ。
渡り廊下でフルート練習してる人の後頭部をどつくな。満足に音階すら吹けない段階でよくそこまでやる気を見せれる。

恒松祐里(おかえりモネも吹奏楽部)がクラリネットなのだが、なぜかエリート気質。「下手なやつとやるとレベルが下がる」とヒロインを言下に否定。こいつの言うことは至極まっとう。両親が音楽家の「サラブレッド」なら別の選択肢もあった気がする。

清水尋也がパーカッションのカリスマ部員だったらしい。こいつが辞めたことが廃部への引き金?なぜか今では老人相手にラジオDJみたいなマネをしている。年寄りの話題と話しぶりがステレオタイプ。年寄りは誰しもみんなあんなしょうがない人じゃないぞ。
高校で不登校ってほぼ落伍者。みんなで戻ってきてほしいと伝えにいくのに老人がカーテンをしゃっと閉じるとか大人のするべきこととしておかしい。
深夜にみんなで家の前で突然演奏とか迷惑。トロンボーンとフルートは練習始めて3週間のド素人だったはずでは?

小出恵介せんせいもカリスマらしいのだが、この9人編成でその実力を発揮できそうもない。と思ったらつぎつぎと部員が復帰し大所帯。都合よすぎないか。楽しそうに茶畑で遊んでるようにしか見えなかった。

吹奏楽ドラマをするとなると音楽そのものよりも、やはり何人かの個人の事情をドラマにするしかない。開始3分の1あたりでもう退屈。脚本がかなり子ども向けっぽい。これでは中学生がギリではないか。

顧問先生作曲のコンクール用オリジナル曲がド素人フルート奏者にはかなり難易度の高いソロパートがある。これは音楽教育と経験をきっちり積み重ねた人でないと無理っぽいフレーズ。
これならドラマになりそうだが、部員たちの雰囲気が悪すぎ。カメラ固定ヒステリック内輪もめ長尺シーンがリアルで重くて嫌。吹奏楽部ってこうなのか?だとしたらみんな一人で音楽やりたいわ。
おだてて伸ばせ。もっと楽しそうにしろ。ゆっくり吹けるようにしてからだんだん速くやる以外に方法はないのでは?港で泣いてる場合でない。
と思って見ていたら恒松が同じことを指摘。それ以前に誰もそれを指摘しなかったのかよ。「吹けたー!」とか言って喜んでる場合でもない。まだリズムが甘い。

吹奏楽を魅力の感じられるドラマにするには一体どうするのが正解なんだ?音楽的な技術的な何か決定的なブレイクポイントをわかりやすく描くアイデアが見つけられない。
授業中に演奏始めたシーンは意味がわからなかったのだが、これが何かを取り戻すということか。アマチュアは何度でもやり直せばいい。

ドラマとして退屈したのだが、橋本環奈の顔のコンディションが今まで見た映画の中で一番いいように感じた。何よりフルート構えてる姿がいい。

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