岩波新書1896「スペイン史10講」立石博高(2021)を読む。岩波新書の欧州史10講シリーズを英仏独伊と読み進めてこれで5冊目。著者は東京外語大名誉教授でスペイン近現代史の専門家。
自分、スペイン史といって思い出すのはアルハンブラ宮殿、レコンキスタ、フェリペ2世、セルバンテス、フランコ総統、ピカソ、中南米カリブやフィリピンを植民地支配したことぐらい。あまり知らない。
スペインの歴史もギリシャ人フェニキア人の地中海世界から始まる。ローマによる支配。西ゴート王国、そしてイスラムの支配。
ウマイヤ朝、後ウマイヤ朝、ムラービト朝、ムワッヒド朝、ナスル朝グラナダ王国、といった名前はやはり呪文として活字としてしか覚えていない。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の三者が共存してたイベリア半島。カスティーリャ王イザベラとアラゴン王フェルナンドの婚姻、そして1492年グラナダ入城によってレコンキスタが完了。そしてユダヤ教徒追放令。これによって以後、スペインにはカトリック教徒のみしか臣民でいられなくなる。王権による容赦のない異端審問が始まる。
ブリュッセルで即位したカルロス1世からハプスブルク朝スペインの始まり。息子フェリペ2世の時代になると帝都マドリードの宮殿で広大な領土からの大量の書類を読んで過ごす王になる。1571年にはレパント沖海戦でオスマン帝国に勝利。新大陸では奴隷を使って銀を産出。フィリピンからは中国の絹と陶器を運ぶ。「太陽の沈まない国」の最盛期。
だが17世紀には衰退がはじまる。カタルーニャは抑え込んだもののオランダ、ポルトガルは独立。寒冷化、ペストによる人口減、毛織物産業でオランダに後塵。
そしてブルボン朝。スペイン継承戦争、ユトレヒト条約…。受験世界史を思い出して頭痛い。
ナポレオン戦争後は年表を見てもなにひとつピンとくるものがない。たぶん、高校世界史ではほぼ特筆されていない出来事と人物ばかり。クーデターが多い印象。誰も強い印象を残す国王やリーダーがいない。
米西戦争でキューバを失ってもスペイン本土経済には特に影響もなかったことが意外。第一次大戦でも中立を保ったし、世界恐慌もあまり影響を受けなかった。だが、労働争議と土地分配を求める農民を軍、警察が鎮圧するというケースが多い。
日本ではフランコ独裁時代(1937-1975)がどのようなものだったのかあまりなじみがない。労使関係の政策ではイタリアを参考。共和国の支持者はほぼすべて訴追。教室にはフランコ総統の肖像、十字架と聖母マリア。カトリックの伝統に基づいた国家運営。
戦後はファシズム色を薄めるのだが1946年2月国連総会ではフランコ政権非難決議で孤立。スペインに大使を置いていたのはポルトガルとアルゼンチンだけ?!
自給自足を目指すのだが53年まで食料配給制度が続く。石油は値上がり。経済が内戦以前の状態に戻るまで20年かかった。
東西冷戦になると西側はスペインを必要とする。50年11月国連総会でスペイン排斥は撤回。ソ連、メキシコ(共和国亡命政府のある)は反対。国際圧力に期待した反体制運動は方向性を失う。
アメリカと軍事協定を結んだことで経済支援を受け、50年代末から工業国として経済発展。
カトリック団体オプス・デイも入閣?!
親アラブ政策をとってフランコは最後までイスラエルを承認せず。
英国にはジブラルタル返還を求めるも、スペインもモロッコに飛び地を持っている。
1962年にECCに加盟申請をするも、民主主義国家でないからと却下される。
60年代スペインは年率7.3%の経済成長を続けたのだが、農業は発展せず、労働人口の1割がフランス、西ドイツ、スイスへ流出。(農村の大量離農で逆に賃金上昇と農業の近代化へ)
闘牛とフラメンコで観光立国化。遅れた農業国からヨーロッパの中進国へ。
カタルーニャ、バスク、ガリシアで地域言語文化の復権が高まる。フランコは独裁から一歩離れて自分亡きあとの体制を考える。
フランコが死ぬと1975年11月にファン・カルロス1世新国王即位。(ブルボン王朝)
民主主義国家へ方向を変える。1978年憲法を制定。
1983年2月までに17自治州からなる地方分権的自治州国家体制となる。
スペインの歴代首相とかぜんぜんピンとこないのだが、アスナール首相(好景気を背景に積極的国際協調路線でイラク戦争に加担し2004年マドリード同時多発テロを誘発)とサパテロ首相(2007年歴史的記憶法で内戦と独裁で抑圧虐殺された人々の名誉回復と補償)はなんとなく名前を憶えている。その後のラホイ首相とサンチェス首相は名前もまったく知らなかった。
スペインといえばカトリックだと思っていたのだが、2019年の調査ではミサに通うカトリック信者は国民の2割?!
10講シリーズはとりあず読みたいものは読んだ。次はロシア史とか読みたいところだがまだ出ていない。岩波新書赤版に「アメリカ合衆国史」があるので次はそいつを読んでいきたい。
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