2022年7月1日金曜日

怪盗ルパン「奇巌城」(1909)

モーリス・ルブランの怪盗ルパン「奇巌城」(L'Aiguille creuse 1909)を江口清訳1992年集英社文庫の第5刷(2011)で読む。旺文社版の文庫化らしい。表紙イラストは天野明。

ノルマンディーのジェーブル伯爵邸で起こった殺人事件とルーベンス絵画の盗難事件。何か気配を察した娘姉妹が階下を見に行くと倒れている伯爵と秘書を発見。そこに犯人?この娘が逃走する犯人を拳銃で撃つ。どうやらその場に倒れたらしいのだが行方がわからなくなる。
そこにしれっと介入してくる男。その正体はイジドール・ボートルレくん。なんとバカロレア試験を間近に控えた高校生。この高校生がすでに警察でも有名な名探偵らしい。このボートルレ少年探偵がこの本の主人公。ルパンは廃墟のどこかで死んでいる?!そしてかなり痛んだ死体が発見される。

ボートルレくんは高校生でありながら新聞社に文章を書いてお金を得ている?どこへでも出かけてホテルに泊まったりしてるので家は裕福?じゃないとこれほどの知性と学識は持ちえない。大人たちと対等に渡り合えない。

自分、今までは南洋一郎訳ポプラ社の怪盗ルパンシリーズを読んできた。今作が4冊目なのだが、これまでに読んだ「黄金三角」や「虎の牙」のアルセーヌ・ルパンとは雰囲気もキャラもだいぶ違う。ルパンが悪党。
なので、ルパンが怪人20面相のようだし、ボートルレくんが小林少年と明智探偵を合わせたような雰囲気。

天才探偵少年が次々に謎を解きルパンの足取りを突き止めてゆく。ルパンがかなり追い詰められて焦ってる。ルパンは何人もの手下を動かして脅迫やら誘拐やらやっている。ガニマール警部もシャーロック・ホームズも誘拐。
この「奇巌城」あたりまでルブランのルパンシリーズにはシャーロック・ホームズが登場するのだが、ドイルから叱られたwらしいので、以後はハーロック・ショーメスという名前に変えられたらしいw 

祖国フランスのためにドイツ人と戦うルパンを読んだ後に「奇巌城」を読んだので正直戸惑った。
絵画と彫刻の盗難事件、天才少年探偵の登場、世界のマスコミを騒がせるルパンとその一味、暗号解読、古文書、そして謎のエギュイユ・クルーズ(空洞の針)とは?内容が盛りだくさん。絵画がすり替えられたり、変装したり、次々にいろんなことが起こって飽きさせない。

この本はフランス人にとってはたぶん相当に価値の高い面白い力作。フランスの国土と歴史、言語に通じた人はもっと楽しめる。夢のある冒険ロマン。

自分、エトルタの海岸にあるエギュイユ・クルーズを自分はこの本を読むまでまったく知らなかった。かつてリュックサックで貧乏旅行したときノルマンディー地方のモンサンミッシェルには行ったのだが、ここはまったく眼中になかった。
ここでクロード・モネも絵を描いてる。まさに奇岩。これから空想をふくらませて奇巌城を書いたルブランはこの地方の出身。

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