2022年7月13日水曜日

ヘミングウェイ「移動祝祭日」(1964)

ヘミングウェイ「移動祝祭日」(1964)を読む。高見浩訳平成21年新潮文庫で読む。
ヘミングウェイは1961年に猟銃で自殺している。この作品が事実上の遺作。1957年にキューバで書き始めて1960年に脱稿。
A Moverable Feast by Ernest Hemingway 1964
「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ。」(ヘミングウェイ 1950)

アメリカ人は昔からパリに対するあこがれが強い。上流階級知識人はみんなパリ留学が夢。この本を読めばよくわかる。1920年代、多くの芸術家が集まったパリを30年経って回想するエッセイのようなもの。ヘミングウェイは美しいパリの思い出を大切に生きていた。
  • 「サン・ミッシェル広場の気持ちのいいカフェ」牡蠣が美味しそう。
  • 「ミス・スタインの教え」ミス・スタインとはピカソの絵画にも描かれたユダヤ系ドイツ人ガートルード・スタイン(1874-1946)。妻を同伴してアパートメントを訪問したヘミングウェイは絵画の購入の仕方を教わる。「服を買ったりしてたら、絵なんか買えない。着るものには無関心になること」
  • 「ユヌ・ジェネラシオン・ペルデュ」スタインさんと文学談義。
  • 「シェイクスピア書店」本を買うお金もないヘミングウェイは貸本屋を利用。
  • 「セーヌの人々」そして古本市場へも出かける。
  • 「偽りの春」奥さんが貧乏に対してなんら不満を抱かなくて感心。
  • 「副業との決別」競馬にハマるも自転車に転向。
  • 「空腹は良き修行」お腹が減ってるのにパリは美味しいものが眼に入ってきて困る。そして作家としてやっていく決意。
  • 「フォード・マドックス・フォードと悪魔の使徒」お気に入りのカフェと話し相手の紳士。
  • 「新しい文学の誕生」カフェで思索してると友人がやってきて…。
  • 「パスキンと、ドームで」酔っ払っていたパスキンの想い出。
  • 「エズラ・パウンドとベル・エルプリ」エズラの部屋にあった久米民十郎によるものとみられる絵画を「好きになれない」と貶してる。
  • 「実に奇妙な結末」スタインさんとの仲に終止符が打たれた顛末。
  • 「死の刻印を押された男」詩人ウォルシュとのやりとり。
  • 「リラでのエヴァン・シップマン」詩人の友人とのドストエフスキーやトルストイ談義。
  • 「悪魔の使い」阿片の壜。
  • 「スコット・フィッツジェラルド」ふたりで一緒に旅行したスコットが酒に弱くて病弱?!
  • 「鷹は与えない」スコットの妻ゼルダ。
  • 「サイズの問題」ゼルダは心の病。夫婦仲がよくないのは性の不一致?!
  • 「パリに終わりはない」お金ないのに赤ん坊を連れてスキー旅行。そして夫婦の終りを示唆。
というような、貧しくも楽しい青春の20年代パリ回想録。この本はヘミングウェイに感心がある人だけでなく、パリを愛する人々にとっても大切な一冊。

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