2022年6月22日水曜日

黒沢清「スパイの妻」(2020)

黒沢清監督の「スパイの妻」をやっと見る。公開時はコロナでそれどころでなかったのだが、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞するなど話題作だった。制作はNHKとNHKエンタープライズ。8K用に作られた後に劇場公開作に手直し。脚本は濱口竜介と野原位。

軍当局に連行された英国人の件で会話。東出昌大が日本の将校にしてはデカすぎる。軍服らしきものが全然似合っていなくて違和感。あのヘアスタイルは海軍の上級将校にしか許されないのでは?みんなわさわさ髪が長い。(諜報活動をするうえで全員ボウズ頭だと都合が悪かったのかもしれない)

神戸の貿易会社社長福原優作(高橋一生)は自分で映画(会社の忘年会余興用)を撮って自宅で家族と女中に見せたりする。
蒼井優の話し方が昭和初期の感じでリアルで良い。
その一方で日本兵たちの体格が良すぎる。(戦局が悪化するまで日本人は痩せてなかったのかもしれない)

優作は映画ロケで戦争中の満洲へ。滞在を引き延ばして戻ってくるのだが、何か雰囲気がおかしい。
女(満洲から連れ帰った)の水死体が浮かんだ件で福原の会社で働いていた竹下(作家になると言って辞めた)に疑いがかかる。聡子は泰治の軍令部から呼び出しと事情聴取。夫はやはり何か関わってるのか?

映像としてあまり映画らしくない。音楽の使い方も。やはりNHKの作るドラマっぽい。
他の黒沢映画のように見るのに集中力がいらない。ストーリーはわかりやすい。
スパイといったら米英ソのスパイを連想したのだが、この夫は世界正義のために動いてる?(でも実際は日本にこんな進んだ人々はまったくいなかった)

暴走する関東軍の悪魔の所業は日本国内でも反感を持っていた勢力もいたのでは?証拠を届ける先は他にあったのでは?
この夫婦はかなり無邪気。亡命に日本円は無意味なので貴金属を買い求めようというに、路地裏の露天商から買い求めるとか、これが戦前の常識なのか。
蒼井優のほうが頭がいいと思いきや…。

密航の手助けをする黒人船員のすることが雑すぎて怖かった。昔は密航とかよくあったかもしれないが、あんな状況で数週間いるのは辛い。
精神病院に入れられた聡子が終戦後数年でアメリカに渡ることができたのは、誰かの手引きがなければできないことではなかったか?

この映画を見て面白いと感じることのできた視聴者は、よほどこの時代に関する映画やドラマを見たり本を読んでる大人だけだっただろうと思った。それぐらい地味な人間ドラマだった。

本当にこの時代に先の見える頭のいい人は、日本円の貯金はすべて使って田舎に家と畑を買って農業をやって戦争が終わるのを待ってた白洲次郎みたいな夫婦。

ロケ地が水戸の芦山浄水所や、鎌倉華頂宮邸とか四万温泉積善館とか島田市河北製品所とか、鹿島海軍航空隊跡地とか、自分が行ったことのある有名どころ。

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