2022年6月23日木曜日

ヒッチコック「断崖」(1941)

アルフレッド・ヒッチコック監督の「断崖 Suspicion」(1941)を初めて見る。BSプレミアムでやってたので。制作はRKO。音楽がフランツ・ワクスマン。
またまた主演はケーリー・グラントだ。原作はフランシス・アイルズ「レディに捧げる殺人物語」(1932)。その作家をまったく知らない。

英国を走る列車の1等コンパートメントでジョニー・エイスガース(ケーリー・グラント)は上品な婦人リナ・マクレイドロウ(ジョーン・フォンテイン)に強引に接近する。3等切符なのに。このへんはいつものユーモア。英国田舎風景が書割りスタジオ撮影だ。

田舎貴族(マクレイドロウ将軍夫妻)の娘リナは美人なのに男性に縁がなく両親も結婚を諦めていたのだが、この突然現れたハンサム男と結婚を考える。(英国は昔からけっこう年配の方でもミスという人が多い)
母親が「バルカン超特急」にも出てたあの老婦人デイム・メイ・ウィッティだ。

ダンスパーティーを2人だけで抜け出して夜のドライブ。ふたりは車中でキス。男が浮いたようなセリフを吐く。女が完全にこの男に夢中。
これは結婚詐欺か何かか?と思わずにいられないのだが、リナには思いを寄せる男も多い。(みんな50代以上に見える)

結婚した二人はナポリ、モンテカルロ、ベネツィア、パリと新婚旅行。このへんがちょっと郵便局に行くと両親に告げて登記所で手続きしてそのまま出かけたように描かれてる。英国の事情がよくわからない。
この男が金を持っていないことがわかっていく。男は女がいずれ相続する財産をアテにしている。生活の糧がない。借金で生活していくつもりか?働くように言ってもそんなつもりはないらしい。なぜか陽気でいいかげん。
新妻からの結婚祝いの贈り物が古めかしい椅子。男は失望の様子。

ジョニーは椅子も売って競馬の借金にアテたらしい。ジョニーの競馬友だちビーキーも品がない。ジョニーは浪費癖があるらしい。リナはだんだん腹を立てる。このへんも落語みたいな感じ。
ここまでサスペンス要素ゼロだが、自分はこんなテキトー言い訳ばかりでその場しのぎ男にむしろ恐怖を感じる。やはり素性のよくわからない相手と結婚してはダメだ。

勤務先の不動産屋も使途不明金でクビになり告訴するという事態になっていたことを知る。さらに父が亡くなったという電報。
勤め先をクビになったのに会社を作ってリゾートホテル開発とか、そんな金がどこにある?調子のいいことばっかり言ってる。

ビジネスパートナーのビーキー・スウェイトはパリで酒を飲んでるときに死亡。英語のわかるバーテンの証言では英国人とふたりで賭けのようなものをしていた。夫はピーギーが酒を飲むと胸が苦しくなることを知っていた。そしてビーキーには保険金が…。

推理小説が趣味のリナはやがてジョニーに殺されると疑うようになっていく…。このへんのイメージ映像が現在の視聴者にはやや滑稽に見える。
しかしカットはどの場面も入念に作り込んでいるように感じた。ジョニーがリナに牛乳を運んでくるシーンの光と影。

あと、真相が脚本として弱い気がする。昔の人はこの程度で満足してたのか?やはり前時代の古典映画。
妻を演じたジョーン・フォンテインはこの映画で第14回アカデミー賞主演女優賞を受賞。米国アカデミー賞の歴史を感じた。

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