2022年6月25日土曜日

おろち(2008)

楳図かずお原作の「おろち」を映画化した「おろち」(2008 東映)を今になってやっと見る。監督は鶴田法男。脚本は高橋洋。
「姉妹」と「血」という2エピソードから1本の長編に再構成されている。主要キャストの三姉妹を木村佳乃、中越典子、谷村美月が演じた。

おろち(谷村美月)の独白ひとり芝居で始まる。昭和25年の嵐の夜、とある屋敷におろちがやってくる。すごく目がギラギラしてる。その家の姉妹が遊んでいる様子をただじっと見てる。
おろちとはその家に住みつく座敷童のような妖怪か?と思ったら、手塚治虫における「火の鳥」のような人間の業のようなものを傍観するストーリーテラー。
姉妹の母門前葵(映画女優)が木村佳乃。自宅に映写室があって自分の映画(ラッシュ)を娘たちに見せる。
途中で映像を止めさせる。何か気に入らない様子。撮り直しを命じ、息を切らして自室へ駆け込む。何かに怯えている。谷村はいつの間にか新しい家政婦ということになっている。
ちなみにこの屋敷の外観と庭園が鎌倉華頂宮邸。執事が嶋田久作

母は娘を早く女優として育てることに焦っている。妹理沙は歌謡ショー。わりと昭和20年代の雰囲気がよく出てる。姉一草は歌が上手く歌えないので母から厳しい指導と体罰。一草は母の映像を見て熱心に演技のお勉強。同じシーンを繰り返し見て一時停止などしてるとフィルムが焼けてしまう。

「18歳の誕生日を迎えると醜くなっていく」という呪われた門前家の女に生まれた葵は化け物になる前に女優を引退。自暴自棄。
泥酔しオープンカーで山道。そして事故。おろち谷村はなんとか葵を助けるのだが、葵の額や手に醜い腫瘍が現れていることを知る。事故現場でおろちは血を流し眠くなる。「門前家の運命を見守らねば!」

あれ?!目を覚ますと佳子という名前の酒場を流して歌う少女歌手(無表情)になってる。そのへんは暴力母(大島蓉子)が説明。身寄りがなく貧しい夫婦に引き取られた不幸な娘。父「顔を殴るな」

いつの間にか20年経ってた。門前葵の娘一草が成長して母そっくりになっている。やはり一草も木村佳乃が演じてる。
なぜか佳子は成長した理沙(中越典子)に300万円で買い取られ門前家に連れていかれる。門前一草の身の回りの世話をするよう指示される。理沙は親切で優しい。そして美人でかわいい。だが、理沙は何かたくらんでる?佳子に何か頼るつもりか?

暮しが一変し希望が出てきた佳子。バルコニーでひとり浮かれているとそこに大西(山本太郎)。この男は撮影所から一草の様子を探りに来た?「一草は母の影に捕らわれている」理沙を「映画に出演しないか?」と誘う。「今度はオマエをスターにしてやる」その条件は母門前葵の銀幕復帰。
発作に苦しむ母葵から理沙に何やら秘密が告げられた。その直後に葵死去。
美しく生まれ醜い姿で屋根裏でひとり死んでいく姉と妹の相克と悲しみ。壮絶でおぞましい人間模様。ほぼ地獄。その状況から逃げろよ。
そしてさらなる絶望と恐怖。嫌なものを見たな…という苦い後味。

木村佳乃は昔からヒステリックおばさんのスペシャリストだったのか。
中越典子かわいい。結婚後はもうあんまり女優業をがんばっていないようだ。

なかなか見ごたえのある佳作だったように感じた。キャストが適切。それぞれが持ち味を発揮。雰囲気も良かった。衝撃のラスト。これはオススメしていい梅図かずお悲劇ホラー。
ポスタービジュアルはあまり適切にこの映画の雰囲気を伝えていない。

主題歌は柴田淳「愛をする人」Victor Entertainment, Inc.

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