2022年6月24日金曜日

岩波新書1766「イタリア史10講」(2019)

岩波新書1766「イタリア史10講」北村暁夫著(2019)を読む。著者は日本女子大教授でイタリア近現代史の専門家らしい。
「本書では、叙述の対象とする空間をイタリア半島とシチリア島、サルディーニャ島にほぼ限定しつつ、ヨーロッパ・地中海世界の興亡の歴史の一環として、イタリアの歴史を描いていく」というコンパクトな一冊。
何かにとりつかれたかのように、何かを取り戻そうと焦るかのように、岩波の世界史10講シリーズを読み進める。

自分、イタリア史というと古代ローマ、フィレンツェとルネサンス、ムッソリーニぐらいしか思い浮かばない。中世は神聖ローマ帝国のおまけみたいなものだし、19世紀イタリア統一は世界史用語集としてしか知らない。

この本ではローマ帝国に関しては第1講で終わるw 速い。この手の本はそういうとこが良い。自分、前8世紀から前5世紀ごろトスカーナで栄えたギリシャ系エトルスキ文化というのを初めて知った。これ、調べてみたらエトルリア人のことらしい。
中世に関しては第2講と第3講で終わるw 各都市が教皇派と皇帝派に分かれて争っていた時代。

そして第4講からルネサンス。フィレンツェといえば1333年のアルノ川の氾濫と1348年のペスト大流行。そして偉大な芸術家たち。そしてメディチ家。サヴォナローラに関してはわずか3行しか触れてない。

あとはひたすら各有力都市の勢力争いとオーストリア、スペイン、フランスなど海外の君主たちの所領争い。ここはぜんぜん頭に入ってこない。列挙ばかりで正直読んでて面白くはない。

第7講リソルジメントの時代が自分としてはこの本を手にとった理由。
デュナンが赤十字を設立しようと思い立った契機は、サルデーニャ・フランス連合とオーストリアによるソルフェリーノの戦い。それ、初めて知った。
あと、ヨハン・シュトラウスのラデツキー行進曲もオーストリアがミラノに侵攻しサルデーニャを退けたことを記念した曲。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートで聴くことが多い曲なのに作られた経緯を知らなかった。

教皇国家とローマ周辺(ラツィオ)をのぞく統一イタリアが1861年に成立。日本と時期的に似てるけど、イタリアが統一国家になったのは史上初めて。イタリアという国家を民衆に理解させることは困難だった。

仏、独、墺から遅れて農業国からやっと工業化。だがイタリア半島の南北格差が広がっていく。海外への移民が激増。
エリトリア植民地からエチオピアに手を出すもアドワの戦い(1896)で大敗。しかし1911年にオスマントルコからリビアを得る。

第一次大戦では参戦に慎重だったイタリア。参戦派の声がでかくて1915年5月24日にオーストリア相手に戦争開始。イゾンツォ川沿いのカポレットでの大敗以後、イタリアが苦境に陥ることを「カポレット」と呼ぶようになる。
第一次大戦は民族自決原則のせいで要求した領土は何も得られないし、戦勝国なのに大不況。そしてムッソリーニ登場。

1943年7月には連合国がシチリア上陸。ムッソリーニの首相解任とバドリオ政権による休戦。ドイツ軍によるナポリ以北の占領。逮捕監禁されていたムッソリーニを救出してガルダ湖畔サロにイタリア社会共和国を設立。ホロコーストへの加担。
ファシズムVSレジスタンスの内戦は日本・ドイツにはなかった独自要素。
このへんの流れは日本人にはあまり馴染みがない。よほどこのジャンルのイタリア映画を見ている人でなければ知らない。

第二次大戦後のイタリアは知らないことだらけだった。イタリア統一以来初となるカトリック勢力を基盤とするアルチーデ・デ=ガスペリ首相の存在は、高校時代に世界史を学んだ山川の教科書には載ってなかった。
内閣から社会党共産党を排除したことでマーシャルプランを受け、1950年代末から60年代にイタリアは豊富で安価な労働力によって年平均6%の経済成長。
白物家電、自動車、タイプライターが主要輸出品。とくに冷蔵庫は60年代に米日に続いて世界第3位だった。

統一イタリア後に初めて第二次産業従事者が第一次産業従事者(農民)を逆転。南部の人口減となる。イタリア北中部の人がピザを食べるようになったのは、高度経済成長時代に南部の人々が労働力として北部に移動して南部の食文化を広めたから?!

キリスト教民主党は過半数には届かない最大政党。第2党が共産党。旧ファシスト右派に閣外協力で緊張を高めるよりも左派と連携。以後、中道左派政権が続く。戦後イタリアの首相は大学教授を兼職した政治家が多い?!

70年代は急進左派によるテロ。1978年には「赤い旅団」によるモーロ元首相誘拐殺害事件も発生。モーロ事件は戦後イタリア最大のミステリー。
オイルショック後に低迷していた経済も80年代に入ると好調。1983年には初めて社会党クラクシ政権誕生。

ベルリンの壁崩壊前後がシチリア・マフィアをめぐる情勢が最も深刻化。マフィアによる政治家、裁判官、ジャーナリストを標的とするテロ事件が頻発。
ベルルスコーニは政治経験のないまま首相。バラマキ政策と財政悪化。緊縮財政。そしてスキャンダルとギリシャ危機。

かつて移民を送り出す側だったイタリアは少子化が進む。21世紀になると東欧諸国からの移民、とくに介護の現場で女性移民労働者が増える。そして現在はリビアからの難民。

0 件のコメント:

コメントを投稿