熊井啓監督の「日本の黒い夏─冤罪」(2000 日活)を見る。1994年6月27日に発生した松本サリン事件の第一通報者河野義行氏に対する長野県警のあまりに悪質な所業と、冤罪をさらに加速させた糞マスコミを描いてる。
日本の醜い部分を煮詰めたような映画。もう最初から胸糞悪いのは覚悟のうえで見る。ちなみに熊井は旧制松本高校(現信州大)の出身。松本市で撮影。
オウム真理教の一連の事件は何も面白くないし酷すぎて見聞きもしたくない。平成が終わるまでに事件に関わった者たちは林郁夫(慶大医)をのぞいて全員死刑が執行された。
事件がオウム真理教によるものと判明後の長野県警の嫌々の謝罪が酷い。なぜ誰も自刃しないのか?生きてて恥ずかしくないのか?警察権力を天子様に返上しないのか?
県警幹部は全員罵声を浴びせての長時間取り調べ体験とかしてみるべき。検察官は全員拘置所に入る経験を必須にしてみるべき。
マスコミも謝って済む話か?新潮社だけはいまだに謝罪してないという話は本当か?
熊井は河野家とつきあいがった。河野氏が事件の犯人というマスコミ報道について強く疑ってたという。
JK遠野凪子さんが登場した瞬間からまるでアイドル。高校の放送部として、すでに冤罪だとわかった後に取材するというシーンから始まる。え、検証討論形式の映画?
取材に応じた地元テレビ局が中井貴一、北村有起哉、細川直美らのチーム。高校生からの取材に応じる形で過去を回想。この映画では河野さんは神部さんという名前に置き換えられている。
少女からの問いかけ。「どうしてみんな犯人だと思ったの?」
記者北村が「オレたちに何か問題でも?」と、まるっきり反省のない態度。
映画上の演出かもしれないのだが、事件発生現場がとてつもなく報道各社と野次馬であふれヒステリックな雰囲気。
裁判官の官舎なら、なぜに該当する裁判についてまず調べない?
中井貴一部長は「薬品を混ぜて有毒ガスを発生させた」件について裏を取るように指示する慎重さを見せる。だが、翌朝の新聞各社は、第一通報者が薬品に詳しく青酸カリを所持していたというだけで犯人扱い。
被害者の症状は青酸カリではなく有機リン系であることは医療関係者なら誰でもわかる。なのに、なんとなく怖い毒物を持っていたから、ガスを発生させたと安易に飛びついた全国紙。
その後警察は毒物が「サリン」だったと断定。日本に存在しない化学兵器がいったいなぜ?
大学教授から「サリンは化学知識のある高校生なら薬品をバケツで混ぜ合わせて簡単に作ることができる」との証言を得る。だったらなぜ今まで日本でそういう事件がこれまで発生してない?
裏をとらずに放送。世間の目を容疑者クロへと誘導。
もうマスコミも警察もめちゃくちゃ悪質。市民からの脅迫と迫害。容疑者とされた河野氏がとにかく哀れ。言ってないことも言ったことにされる。取り調べ刑事が超凶悪。
両親が倒れ、残された子どもたちはどうなる?
JK遠野凪子の怒りの追及。記者たちの自己弁護。北村は記者としての資質に欠く。
冤罪に加担した日本警察とマスコミにあきれる。「年越しそばは食わせるな!」って酷すぎる。なにかの勝負事のつもりか。これは本当に警察関係者が言ったことばなのか?
謝罪すればそれで済む事なのか?警察や記者から命で償う者がなぜ出てこない?
報道部に文句言ってきた営業部長は辞めたのか?河野宅やテレビ局にクレーム電話した偽善正義中毒市民はどうした?
なぜに女子高生がテレビ局社員の責任を追及する形式にした?そこはちょっと的外れに感じた。
正直この映画は1級エンタテインメント作のレベルにはないように感じた。地方局がつくる実話再現ドラマのようでもあった。犠牲となった市民たちの事件当時を振り返る映像が恐ろしい。
でもたぶんそれでいい。この事件は貴重なものを学ばせ与えてくれた。警察リーク情報を信じてはいけない。煽情的なマスコミ報道を信じてはいけない。煽ってる人は冷たい目で距離をとって見ないといけない。警察官を信用してはいけない。
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