2022年6月12日日曜日

ヘミングウェイ「海流のなかの島々」(1970)

ヘミングウェイ「海流のなかの島々」を沼澤洽治訳新潮文庫上下巻で読む。これはヘミングウェイの死後に夫人が未発表原稿を1970年に出版したもの。書かれた時期は1946~51年ごろと推測されているらしい。
ISLANDS IN THE STREAM by Ernest Hemingway
第1部「ビミニ」
315ページ続く。主人公トマス・ハドソンは画家。メキシコ湾流のほとりの小さな島(バハマ諸島ビミニ島)で暮らしている。モンタナの別荘を賃貸に出し、石油採掘権から収入があり、画家としても評価され、成功者の悠々自適の生活。昼は泳いで釣りをして画を描く暮らし。夜は酒。別れた妻との3人の子が夏休みに遊びに来る。

田舎は乱暴者が目立つ。悪党たちとのいざこざ。子どもたちを潜りに行かせればシュモクザメ。
田舎の祖父母の家に集まった親戚一同のような雰囲気。なのに子どもたちがやってることがメカジキ釣り。アメリカの金持ちは違う。
子どもたちが帰る。てっきり汽船かなにかに乗るのかと思ってたらシコルスキー水陸両用機でびっくり。

そして第1部終了のラスト付近で突然目の前がサッと影が差すような悲報。

第2部「キューバ」
主人公は第1部に引き続きトマス・ハドソン。今はキューバに住んでいる?ボイシーという猫を飼っているのだが、これは巡洋艦ボイシーにちなんだもの。ひょっとしてボイシーってアイダホ州のボイシ?と思って調べてみたらやっぱりそうか。息子にせがまれる妄想でついもらいうける。悲しい記憶。
この猫にアボカドを食べさせてる記述がある。え、アボカドって動物には毒じゃなかったか?

あとはひたすら男と男の会話、思い出話、男女の会話。とめどない。スペイン語が多くてニュアンスがよくわからない。あまり日本人にはなじみがないものばかり。とくにストーリーのようなものを説明できない。読み終わった瞬間からもう思い出せない。

第3部「洋上」
前の2部とのつながりや時間経過がまったく見えないのだが、トム(ハドソン)は船に乗ってドイツ軍の掃討作戦(?)に参加してるらしい。どのへんの時期の戦局なのか?まったく説明がないので不明。
酒飲んだりしてるので、あまり組織的軍務のような感じがしない。だが軍人と一緒に行動?グアンタナモの司令部からの指示で敵を探してるっぽい。

ドイツUボートはバハマ・キューバにも出没してたのか。島民が虐殺されている現場を発見したりと、前2部とまったく雰囲気が変わったハードボイルド。
巻末解説を読んで、ヘミングウェイは愛艇を武装囮船として実際にパトロールに従事してたことを知った。

正直、この長編作が「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」「日はまた昇る」と同じような価値があるかはわからない。あまりピンとこなかった。だがやっぱり男のためのかっこいい男の小説。

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