2022年4月3日日曜日

庵野秀明「ラブ & ポップ」(1998)

庵野秀明監督の初の実写劇場公開作品「ラブ & ポップ」(1998)をついに見る。表記では庵野秀明(新人)と書かれている。原作は村上龍
これ、自分は劇場公開時に友人と観に行った。どこで見たかよく覚えていないのだが、おそらくたぶん渋谷?たぶん2回続けて見た。
これ、ここ数年ずっともう一度見たいと思ってた。だがテレビでも放送されないし、ツタヤでDVD探してもなかった。今では配信で見れる時代になった。

もう内容はほとんど覚えていなかった。覚えていることと言えば、映画館の最前あたりで見ることになってしまい画面に酔ったこと。

家庭用ビデオカメラ5台を同時に回す形式で撮影。なので画質は家庭用ホームビデオ。
ありとあらゆるカットを試してる。電子レンジの中にカメラを置いたり、ビールジョッキの底にカメラ置いたりと、当時としてはかなり実験的な映像作品だと感じた。とにかくひたすらカットバックの連続で見ていると酔う。

90年代、ケータイ電話を持ち始めたルーズソックスコギャル(女子高生)による援助交際(ほぼ売春)が社会問題化していた。この映画は女子高生の側からの視点でそれを描く。普通の家庭の女子高生が援助交際でお金を稼ぐ真夏の大冒険。

主演は三輪明日美。女子高生4人組の中でいちばん普通の子。当時はグラビアなんかで見てたアイドル女優。撮影当時たぶん15歳ぐらい。ぶっちゃけ特にかわいくないw
しかし映画公開から数年後、21歳ぐらいで40代中年男性と結婚というニュースを聴いたとき、この社会の闇を感じた。

そして希良梨。鼻がでかい。このアイドル女優は「GTO」でほぼブレイクしていたのだが、この映画公開後にジャニーズ地雷を踏んでしまい、芸能界から消された。闇を感じた。
工藤浩乃という人のことは劇場で見た当時もよく知らなかったし印象もない。

そして当時18歳の仲間由紀恵。4人組の中で一番大人の扱いが上手いJK役。当時はまだ仲間由紀恵は無名だったと書かれていることも多いのだが、自分はこの映画公開時から仲間由紀恵を知っていた。テレビCMにもドラマにも出ていた。
たぶん、仲間由紀恵めあてでも見に行ったんだろうと思う。かの「TRICK」が始まる2年前。今見返しても仲間由紀恵は別格の美少女。ビキニ試着シーンがあることを忘れていて驚いた。

「あの素晴しい愛をもう一度」をバックに4人が横一列に並んで渋谷のドブ川(渋谷川)を真顔で歩き続けるというシーンも印象的だったのだが、あれは4人にとっても試練だったはず。何かで不満タラタラ述べていたのを読んだ気がする。

あと、今回見返して、晴海橋梁の上を歩いてるシーンに驚いた。怖くはなかったのか。
このヒロインがやたらフジフィルム製コンパクトカメラ「カルディア・ティアラⅡ」でバシャバシャ写真を撮る。
この時代は日常風景を記録しようと思えばフィルムコンパクトカメラがデフォ。フィルムを5本とか10本とかまとめ買いして現像に出す。現像とプリントサービスで27枚撮りとか36枚撮りとか。フィルム1本で安いところで790円とか。

そして「テレクラ」。今の若者は90年代のドラマに映る街の風景で「テレクラ」と書かれた看板を見る以外にその存在を知らないはず。今は失われた渋谷の風景。
90年代はそうやってエロ目的の男女が出会ってた。スーツ姿の大人が街で普通に女子高生に声をかけてた。今から見ると異常だが、それはやがてSNSになりマッチングアプリ。

この映画もそんな大人がたくさん出てくる。一緒にしゃぶしゃぶを喰おうと声をかけてくる男がモロ師岡さんだ。地下道で声をかけてくるロン毛スーツ男が吹越満さんだ。みんな数千円で女子高生をパーティーコンパニオン扱い。
お金で買われる話し相手。時には危ない目に遭ったり、お金をもらえなかったり。
こいつらが好き放題したので青少年健全育成条例がどんどん厳しくなっていった。ある意味時代の捨て石。

援助交際指南役の仲間由紀恵「私、何度か最後まで行ったことあるんだ」とヒロイン三輪明日美を引きずり込むのとか、年頃の娘を持つ親は見るのが嫌だと思う。

制服女子高生が宝石を買いに来るとかおかしい。子ども相手にモノを売る商売とか異常。指輪欲しさに女子高生が援助交際に急ぐ。
5万払えそうなおじさん役が平田満。ここでも仲間が交渉役。相手を気持ちよく接待してお金をもらおうとする。だがこの平田の要求がマニアック。女子高生が何回か噛んで吐きだしたマスカットをコレクションw ヒロインたちテンションだだ下がり。
JKがカラオケで歌う歌が広末涼子「大スキ!」ちなみに広末涼子はこの歌で紅白出場。そんな時代。
なんとか12万円稼いで指輪を買いたい三輪明日美にたちはだかる最大の試練が手塚とおる。不潔な感じでやたら唾を吐く激キモ男。卑屈なうえにときに偉そう。女子高生の手にアレを出す男。援助交際女子高生もつらいよ。

自分が手塚という俳優を最初に認識したのがこの映画。今もこの俳優を見るとこのシーンを思い出す。世の中は気持ちの悪い男だらけ。たぶん区役所で働いてるような人はこういうやつを相手にしないといけない。三輪の嫌そうな顔がすごくリアル。

そして変態男のラスボス「キャプテンEO」が浅野忠信。会ってすぐホテルに行くことを要求。こいつの話すことにはやたらピー音がかぶさる。意味不明。説教してくるタイプの犯罪者。最悪だが少女はひとつ賢くなって大人になった…っていう。

今見返してみて、ぜんぜん面白く感じなかった。90年代とはそういう時代かもしれない。物欲を刺激し続ける社会は異常。日本人は早く目を覚ませ。

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