2022年4月2日土曜日

庵野秀明「式日」(2000)

庵野秀明監督の「式日」(2000)を見る。なんとなく存在は知っていたのだが今回初めて見る。
庵野監督にとっての初の35mmフィルム実写映画。アート系作品。公開は東京都写真美術館?最初から興行的成功は眼中になし?庵野秀明らしさを見たい人向け?制作は徳間康快と、スタジオジブリの鈴木敏夫

主演は藤谷文子。当時19歳?このひとはスティーブン・セガールの娘。自身の書いた小説「逃避夢」を原作とする。なので自作自演。藤谷自身の家族問題がベース。不幸な家庭と過去の体験。そして絶望。少女の孤独で病的な精神世界をアート作品。

そして、映画監督岩井俊二が初めて俳優として出演している。庵野カントクを演じてる。
庵野の出身地の山口県宇部市が舞台となっている。
作品には岩井俊二っぽい雰囲気がただよう。音楽、編集において。そして庵野カントクらしい映像とカット。

カントク(岩井俊二)は宇部市に里帰り。線路、コンビナートの吐きだす煙、シャッターの閉まった商店街、まるで廃墟ディストピアのような街。人がいない。
線路の上で赤いブラウスとヒール、線路で横になってる少女とカントクは対峙し会話。「明日は私の誕生日なの」そして交流。日付がカウントダウン。まるで寺山修司のような映画。

ナレーションパートが松尾スズキの箇所と林原めぐみの箇所がある。松尾が岩井の心の声。林原は少女の心の声。
少女は廃墟ビルに暮らしてるのに電話は引いてある?留守電に大竹しのぶのヒステリックな声。この母の感情の起伏が一番怖い。

少女は廃墟ビル屋上から身を投げる直前までやって「まだ大丈夫かどうか」を試す「儀式」をカントクに見せる。
映像作家であるカントクは被写体として少女を撮り始める。だが少女はもうあきらかに精神病。こういう人を街に放置しておいていいのか?秘密の地下室は水浸しでろうそくの祭壇。

岩井俊二と藤谷文子の演技が敢えてなのかかなり棒。なるほど、これは確かにアート系映画だわ。役者たちの演技の力にはいっさい頼らない。男女がこどものようなやりとりをしてるだけ。
藤谷は原作者なのでセリフのニュアンスはこれが正解なはず。90年代ギャルJKのダルそうな喋り方。

なるほど、これは見てて困惑しかない映画。狂った人の話を根気強く聴ける人しか見れない映画。商業映画としてギリだし劇場公開をためらうわ。この女優にあまり魅力を感じられなかったのも痛い。半分ほどの地点で早く終わってくれることを願った。

あんまり見てよかったことはなかった。もう話題にする人もいないわけだわ。
20世紀末の宇部の風景が映像として残されたことは意義がある。撮影当時の風景はたぶんもうほとんど残ってないかもしれない。

音楽は加古隆。主題歌はCocco「Raining」。この曲は今聴くととてつもなく懐かしい。

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