2022年2月28日月曜日

シリーズ横溝正史短編集Ⅲ(2022)

池松壮亮が名探偵・金田一耕助を演じるBSプレミアムの名物企画、30分で横溝正史短編を「ほぼ原作に忠実に映像化」する「シリーズ横溝正史短編集パート3」が2月26日に放送された。
今回も告知されてからずっと楽しみにして待っていた。事前に原作を読み返して放送に備えた。
たしか前回までは1作ごと放送だったんじゃなかったかと思うのだが、今回は一晩で一気に3作品を放送。全3幕というてい。

今回は「女の決闘」「蝙蝠と蛞蝓」「女怪」の三作品。どれも予想外。横溝オタ以外にはあまり馴染みのない短編かと思われる。たぶんどれも初映像化?(女怪はすでに片岡鶴太郎版があることを確認)

「女の決闘」演出:宇野丈良
今まで見て来た30分金田一シリーズの中で一番出演者が豪華だった気がする。
東京で英語を教えていた英国人夫妻の送別パーティで起こった毒殺未遂事件。招待され現場にいた金田一が機転を利かせて被害者女性の命を救う。
とくに、ヒロインともいえる河崎泰子役が菊池亜希子だったのは意外だった。正直自分はもう忘れかけていたモデル女優。結婚して出産(2児の母)した今も美人。この人は顔の構造と声質が櫻坂の関に似ている。

さらに、藤本夫妻がバレエダンサー首藤康之板谷由夏だったのも意外。この3人の配役はぴったりだったかもしれない。
パーティー主催者の英国人がジョン・カビラだったのはびっくり。原作を読んで思い描いていた人と風貌がまったく違っていた。パーティーに来ていた中井夫人がYOUだったのも意外。
ストリキニーネという薬物の名前を連呼すると古めかしく感じる。アガサクリスティーとか読む人にはおなじみの毒物。
一人が毒物によって殺害未遂、そしてもう一人が殺害された事件の背後はこうでした…という事件。わりと単純だが、視聴者は楽しめただろうか。
ドラマロケ地の一部が埼玉県入間市のジョンソンタウンだと見た瞬間に気づいた。

「蝙蝠と蛞蝓」 演出:渋江修平
主人公湯浅役が栗原類だったのは意外。原作を読んでいるときイメージしていた姿とまるで違う。錯乱気味でプライド高いところは良かったかもしれない。

お加代が冨永愛だったのも意外。イメージとまるで違う。てか、そもそも下宿アパートがイメージと違う。もう乱歩作品とかに出てくるような下宿屋は現実には存在しないので致し方ない。
アパート裏の平屋に住む妾(主人公は心の中でなめくじと呼んでいる)役は長井短という女優。調べてみたら「賭ケグルイ双」に出てた人だ。

またしても渋江監督が変態ぶりを発揮した演出だった。一部が舞台演劇っぽい。あの短編では書かれていない行間を自由に描きすぎた30分だった。事前に予想した通り、やはりこの短編が一番面白かった。てか、誰がどう描いてもこの短編は面白い。

「女怪」 演出:佐藤佐吉
金田一耕助の恋を描いた短編。名探偵の忘れれられない女性というと、シャーロック・ホームズに出てきたアイリーン・アドラーを思い出す。
銀座のバーでの耕助と虹子ママのたのしい時間がダンスシーンで描かれているのはこのシリーズならでは。舞台演劇っぽい演出。
今作のヒロイン虹子を演じたのは芋生悠(いもう はるか)。前作では「美しき野獣」にも出ていた。この人はつい最近も女子高生を演じていたはずなのにバーのママ役。調べてみたらまだ24歳。映画でよく見かける若手女優。なのにサディスト夫からの夜の営みに苦しむ女性という役。

でもなによりも驚いたのは、金田一さんが「先生」と呼ぶ「私」役が清水ミチコだったことw 絵面だけで笑える。
伊豆のN温泉という設定だが、この映像作品のロケ地はたぶん相模湖。あの一帯はまだあんな旅館が残ってる。
「猫のように退屈を楽しんだ」という箇所が、本当に猫がじゃれあっているように描いていて笑った。

そしてもう一人の重要キャストが安藤政信。この人が何の役かはネタバレになるので言えない。
金田一耕助の哀しい恋の結末。切ない。ま、金田一シリーズはどれも酷い結末を迎える事件だが。

結果、3作品どれもが配役がぴったりかつ驚きのランナップ。自分としては、金田一が「妖精めいたものを感じた」という泰子に菊池亜希子を選んだことを評価したい。
あと、持田虹子が芋生悠だったことも評価したい。

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