高野悦子「二十歳の原点」(1971)を十数年ぶりに読み返した。というのもこの新潮文庫版が図書館廃棄リサイクル本としてそこに無償配布されていたから。
高野悦子(1949-1969)さんの遺品ノート日記。ざっくり簡単に説明すると、左翼女子大生の20歳の誕生日から半年間、自死の前日まで書き綴られた日記。
この本を初めて読んだとき、自分も大学ノートに日々の些細なことを日記として書きなぐっていた。読んだ本、映画、テレビ番組、スポーツの試合、ムカつくやつらなどへの呪詛、行った場所などなどを書いていた。ブログに移行して以後ほとんど読み返したこともない。
他人の日記と言うものを初めて読んでみて、自分の書いてることとはだいぶ違うなと感じた。
高野さんは詩人にあこがれていたらしく、文体が詩的。昭和人らしい軽薄さも感じられる文体。
この時代の大学生は今の時代とは異なる点がある。よほどぼんやりした学生以外はほぼ全員が70年安保、米軍基地、沖縄、ベトナム戦争などの社会問題と世界に感心を持ち、自分なりの意見を持っていた。(今の学生はたいてい環境問題、格差社会、貧困にぐらいは関心は持ってるだろうけど)
高野悦子さんが京都立命館の学生として20歳を迎えたとき、たまたま1969年だった。学園紛争で大学は毎日のように休講。たまに警官隊と衝突。
そんな日々が書き連ねてあるのだが、それだけじゃない青春の日々も活き活きと読み取れる。これが当時のスタンダード女子大生?
月6500円という、わりと標準よりも高い仕送りがあり生活にそれほど困っていない。よくタバコと酒、本を買っている。
太宰や日本現代史に関する本をよく買って読んでいる。悩んでる。ジャズ喫茶によく行っている。
ジャズとクラシック音楽をよく聴いている。そのへんは20歳の女の子らしい。それほど難しいことばかり考えてるようではない。(たぶんテレビは持ってない)
なぜか京都国際ホテルで給仕ウェイトレスのバイトをしてる。わりとくたくたになるまで働いてる。バイトで疲れた…という記述が多い。
読書階級インテリゲンチャ予備軍である学生はまだ社会を知らないし労働者たちを知らない。それではいけないということでバイト?本人は最底辺の日雇い労働というつもりでいた?
大学にあまり友人のいなかった高野さんは、バイト先の社会人たちのことをよく書いている。鈴木と中村の記述が多い。あと、自殺願望。
高野さん本人は、まさか死後に日記が出版され、新潮文庫化され50年以上に渡って読み継がれる一冊になろうとは思ったなかっただろうと思う。だが、鉄道自殺の前日に書いたノートを処分してないところを見ると、誰かしらに読んでもらいたい願望はあった。
淡い恋心のようなものを抱いていたアイツといつのまにか肉体関係になっていたところは前回読んだときもアッと驚いたw
最後の方は人間関係の整理、そして精神錯乱と自暴自棄。読んでられない。誰か、自殺を止めることはできなかったのか。
ちなみに、乃木坂46賀喜遥香さんにとって高野悦子さんは宇都宮女子高校の53期先輩。はたして賀喜さんは「二十歳の原点」を読んだだろうか。
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