2022年2月25日金曜日

アガサ・クリスティー「チムニーズ館の秘密」(1925)

アガサ・クリスティー「チムニーズ館の秘密」を読む。高橋豊訳のクリスティー文庫版(2004年初版)で読む。2018年の夏に100円で見つけて買っておいたものをようやく取り出して読む。私的クリスティマラソン81冊目。
THE SECRET OF CHIMNEYS by Agatha Christie 1925
初期クリスティのスパイ物。ローデシアで英国婦人たちを案内中の旅行会社社員アンソニー・ケイドくんは旧友のジェイムズ・マグラスくんとばったり再会。

国王夫妻が暗殺され共和制に移行した「ヘルツォスロバキア」なる架空の小国の元大臣貴族が書き記した回顧録原稿を、ロンドンの出版社に持ち運べば1000ポンドもらえる。自分は金鉱の有力情報を持ってて掘りに行くので、代わりにロンドンに行ってくれないか?
アンソニーは旅行会社をすぐに辞めて、マグラス名義で船で英国に帰国。

一方そのころ英国では政府高官ケイタラム卿と外務省ロマックス氏がひそひそ話。チムニーズ館にその王子がやって来る。英国はこの小国の石油利権を狙ってる。回顧録原稿を持ったマグラスという人物が英国にやってくるので原稿を事前に回収する交渉をしたい。
回顧録が出版されると困る王政擁護派も原稿を狙う。アンソニーはホテルで襲われたりもする。

開始数章を読んだだけで面白い。クリスティー女史の書く大人たちの会話、男女の会話、おっちょこちょいの会話がユーモアがあってオシャレ。男女が出会ったり、死体が見つかったりする正しい英国スパイスリラー。
だが、展開はほとんど屋敷内部で起こるので地味。

アメリカ人探偵、フランス警察の刑事、フランス人家庭教師、イタリア人、などが登場する古典的な国際スパイもの。実はアイツの正体はアレで…という展開にはそれなりに驚けた。
これがバトル警視初登場作。ほとんど表情を変えない有能刑事。

第一次大戦後のオーストリアハプスブルク家の没落と逆行するようなロマンス小説。じつは貴種流離譚。ラストはちょっとダラダラ長かった。

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